PHR世界の事情(2)フランス、デンマーク篇

2019 年 6 月 27 日


NTTデータ経営研究所 岸本純子マネージャー

課題は普及率の底上げ、デンマークに課題解決のカギ⁉

 人が一生涯の健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナルヘルスレコード)について、世界の主要国でほぼ共通した課題は、普及率の底上げです。

 比較的人口規模が小さい国は、PHRが政府のシステムとして運用されていますが、国民への普及が進まないことに頭を悩ませている国が少なくありません。NTTデータ経営研究所のライフ・バリュー・クリエイションユニットヘルスケアグループ・岸本純子マネージャーへの取材を通じて、主要国がPHRを運用する上で抱えている課題をまとめました。

 フランスは、医療機関同士が情報連携するEHR(Electronic Health Record)とPHRの取り組みとして、医療情報を医療従事者間と患者自身による管理・共有を目的とした全国民対象のDMP(個人医療記録)があります。国が費用負担した「ASIP Sante」(政府の外郭団体)が運用しています。

 16歳以上のフランス国民には、「Vitale」と呼ぶICカード保険証が無料配布されています。このICカードは、DMPへのアクセスや、保険のオンライン請求に利用されています。

 しかし、EHRの普及は進まず、2016年2月時点でDMPユーザーの医療機関は698にとどまり、全体(約7万5000)のうちの1%未満です。またPHRの普及率も低調です。同じ時点のDMP利用患者数は、57万3644人で、国民の1%弱です。

 世界各国のEHRやPHRの仕組みを研究しているNTTデータ経営研究所の岸本純子マネージャーは、「医療情報を確認するだけでは、PHRの利用率は上がらないというのが各国が直面している課題です。PHRを使うことで、健康維持以上のメリットを生み出せるかがカギになります」と解説します。

 その中で、岸本さんが好事例として挙げているのが、デンマークです。ヨーロッパ北部にあり、北はノルウェー、東はスウェーデン、南はドイツと国境を接しています。

 人口約570万人、世界で最も小さな国の1つです。デンマークでは、EHRは「Medcom」と呼ぶ、医療セクターに関連する公的機関や団体、民間企業の間で設立された非営利合弁組織を中心にネットワークが構築されています。EHR普及率は100%で、約5000の医療機関と260軒の薬局が参加しています。一方、PHRは公的健康ウエブサイト「Sundhed.dk」を通じて国民は、医療情報にアクセスすることが可能です。

 「Sundhed.dk」には、多様なサービスが付帯されていて、それがPHR利用率を後押ししているようです。これらのサービスなどにより、PHRの利用率も高く、2018年3月は国民の3割(約170万人)がアクセスしているとのことです。

民間企業との連携で一層の普及目指すシンガポール

 アジアにも参考にすべき国があります。人口約560万人のシンガポールです。政府主導で、保健省がNEHR(National Electric Health Record)を構築しています。全国民の医療情報がNEHRに登録されています。

 PHRについては、2015年から全国民が「HealthHub」というポータルサイトから、NEHRの医療情報の一部にアクセスできるようにしました。2017年1月末現在、「HealthHub」の月間平均閲覧数は約53万に達しています。国民の10人に1人弱がアクセスしている計算となり、PHRの普及が進んでいるといえそうです。

 「HealthHub」に は、個人、子ども、家族(高齢者)向けのポータルがあります。また、許可された介護者は、被介護者の情報にアクセスできるようにもしています。「HealthHub」は今後、民間企業が提供する健康増進アプリと連携することも検討しています。

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