PHR世界の事情(3)アメリカ篇

2019 年 6 月 27 日

米国PHR、「Blue Button」は統合型に移行
患者の意思決定支援や医療従事者の負担軽減目指す‼

 人が一生涯の健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナルヘルスレコード)につながるサービスで有名なのは、米国の「Blue Button」です。このシステムで医療情報にアクセスできる国民は約1.7億人と推定されています。「Blue Button」は現在も進化を続け、患者の意思決定を支援したり、医療従事者の負担軽減につながるものに変わりつつあります。

 医療情報システムに詳しい、国立保健医療科学院の木村映善統括研究官は「『Blue Button』 イコール PHRではありません。『Blue Button』はまだ、私の考えるPHRのレベルに達していないからです。あるべきPHRとは、患者が自分のデータとして活用できる形態で医療情報の提供を受け、患者の主体的な意思のもと、自分で管理して第三者に提供できるものです」と指摘しています。

ブッシュ政権「医療ITイニシアティブ」で10年計画を策定

 ブッシュ政権(任期2001年1月~ 2009年1月)は2004年4月、医療の質向上などを目指し、行動計画「医療ITイニシアティブ」を掲げました。その中で、10年後の2014年には国民のほとんどが、電子医療記録にアクセスができるようにすると打ち出しました。

 「医療ITイニシアティブ」を受け、国家医療IT調整官室(ONC=Office of the National Coordinator for Health IT)が設置され、ONCを中心に医療・健康情報を電子的に管理活用するEHR(Electronic Health Record)の標準規格が策定されました。その後、オバマ政権の2009年2月、医療ITを推進するためにHITECH(The health information technology for Economic and Clinical Health)法が制定され、EHRの標準規格を採用した医療機関にインセンティブを付与する制度が創設されました。

 EHRの標準規格を整備する一環で、ONCがPHRについての「Blue Button Plus」実装ガイドを提供。この規格により、これまではテキストやPDFデータなどをダウンロードしても閲覧するだけでしたが、構造化されたデータ形式になり、データ分析や二次利用が可能になったほか、転送プロトコル、APIを定義したことで安全なデータのやりとりができるようになりました。

トランプ政権の「My Health EData」で「Blue Button2.0」へ

 トランプ政権が2018年3月に掲げた行動計画「MyHealth EData」によって、「Blue Button」はさらに進化を続けています。医療情報を単に閲覧できたり、ダウンロードできたりすることにとどめず、有効活用しようとしています。

 「Blue Button」の後継は、安全な伝送方法といわれる「Direct Protocol」とい っ た 標 準 規 格 を 採 用 し た「BlueButton Plus」と な り、「My HealthEData」を受けて、「Blue Button 2.0」がスタートしました。「Blue Button2.0」は、医療情報にアクセスする患者のコントロール能力を強化しようしています。標準の医療情報交換規約に「FHIR」、医療情報へのアクセスを求めるための認可手段として、「OAuth2.0」が採用されています。

 木村統括研究官はPHRの形態について、▽自立型▽施設固有型▽統合型―の3種類に分けています。「Blue Button」「Blue Button Plus」は自立型と施設固有型に対応する使われ方をしていましたが、「Blue Button 2.0」で初めて、統合型の使い方が実現できる可能性があるとしています。

 これまでの形態は閲覧機能が中心で、患者の意思決定支援には限りがあります。情報を統合することで例えば、患者への処方が適切かどうかを現在の疾患や既往歴などからAI(人工知能)を使って容易に判断することも可能になるかもしれません。

 最後に、木村統括研究官は日本でのPHRについて、「私はEHRとPHRを同時に進める『二方面作戦』がいいと思っています。EHRとPHRは全く別個の種類のデータではなく、共通するものが多いので、相互運用性、再利用性を高めるために標準医療情報規格への準拠を強力に推進し、どちらにも使ってもらえるようにするのがいいでしょう」と話しています。

Information

  • 新着情報
    医療ポータルサイト「めでぃログ」がオープンしました。
    患者さんがその時点で最良な医療にたどりつき、自分にとってベストな医師に出会うための情報を発信していきます。このサイトは日々、進化していきますので、ご期待ください。