コロナ戦記vol.1
院内感染を乗り切った東京都立墨東病院
筒井健治事務局長

2020 年 7 月 27 日


 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を受け入れ、通常診療を縮小させながら医療を継続した東京都立墨東病院(墨田区、765床)。事務局で陣頭指揮を執った筒井健治事務局長は100日以上の病院の奮闘を通じ、「難局を乗り切るには職員を不安にさせてはいけない。院内広報も重要だと再認識した」と述懐する。 

=新型コロナとの奮闘の記録=
1月29日 中国・武漢から
     政府チャーター機で帰国した感染者引き受け
2月8日  横浜港に停泊していたクルーズ船の感染者引き受け 
4月7日  政府が緊急事態宣言発令
4月14日 院内での感染者4人と発表
4月20日 通常診療体制の縮小
4月28日 最後の感染者(43人目)
5月15日 通常診療開始へ “安全宣言”
5月25日 政府が緊急事態宣言解除


インタビューに応じる墨東病院の筒井事務局長

■連絡調整が困難だったチャーター機・クルーズ船

 中国・武漢からの政府チャーター機で帰国したCOVID-19患者(疑いを含む)の引き受けは、想定外の対応に苦慮した。筒井事務局長は「ともかく時間が読めなかったことに苦労した」と振り返る。

 羽田もしくは成田に到着したチャーター機の乗客には空港検疫があり、発熱といった有症状の人は感染症指定医療機関に送ることになっていた。一方、PCR検査をして陰性となり症状がない人は、ホテルや国の研修所などに入ってもらった。

 PCR検査で陽性だった人の多くが、新宿区にある国立国際医療研究センター病院(749床)に収容された。そこの収容能力を超えると墨東病院に搬送されてきた。COVID-19患者の受け入れにあたっては、感染症科医師、感染症看護を専門にする看護師が待機した。事務局が苦労したのは、いつ、さらには何人が病院に到着するかを事前に把握できなかったことだ。

 2月8日以降になると神奈川県・横浜港に停泊していたクルーズ船のCOVID-19患者は、横浜市内の病院で受け入れが困難となった際、墨東病院が受け入れ先の一つになった。クルーズ船と同市内の病院とのピストン搬送の後だったことから、墨東病院にいつ到着するかが分からず、患者の受け入れが深夜に及ぶこともあった。職員の待機時間が長くなり、通常業務に多大な影響が出る日々が続いた。


■院内感染への対応

 ある病棟で4月上旬、複数の患者および職員のPCR検査で陽性が判明した。墨田区保健所の指導の下で直ちに、当該患者の感染症病棟への転棟、職員の自宅待機、濃厚接触者の調査などを実施した。調査の過程で院内の複数の部署、複数の職種にわたり感染が広がっていることが明らかになった。

 墨東病院は地域の医療関係者から、区東部地域の「最後の砦」と言われている。その中で20日から新たな入院、新規の外来患者の受け入れを制限し、21日からは救命救急センターの新規患者の受け入れも停止した。上田哲郎院長にとって苦渋の決断だった。

 一方、COVID-19患者の受け入れや精神科救急は続け、周産期(妊娠・出産での母体や胎児・新生児の生命に関わる)医療と小児救急は、受け入れを一部制限しながら継続するなど、公立病院として担う行政的医療を継続した。

■感染防止には院内広報も大事に

 今回の院内感染を教訓に墨東病院では電子カルテや院内LAN、それぞれの掲示板を使ってCOVID-19の最新情報や院内の感染防止対策についての情報を発信している。医療スタッフ以外にも、感染防止などに対する知識を深めてもらおうという取り組みだ。院内広報は副院長に担当してもらっている。

 筒井事務局長は「職員も不安です。院内で感染者が出ている中で、仕事を続けていて大丈夫なのかという気持ちもあったと思います。そのためにも院内広報は重要です。今、院内はどういう状況で、それに対して病院はどんな対策を講じているかを発信してもらっています」という。

 今後の課題は、地域の連携医療機関のほか、住民・患者への周知になる。救命救急センターを含めて新規の入院・外来患者の受け入れをほぼ一か月間停止したため、その間は患者数が急減した。

 通常診療を再開する「安全宣言」を5月15日に出したが、その情報が地域に広く行き届いていないかもしれないため、院外広報に力を入れている。通常診療を縮小した際に地域の連携医療機関から、通常診療の再開はいつになるのかといった問い合わせが相次いでいた。そこで、地域の診療所の先生方に向けたチラシを作成、配布を開始した。

 チラシでは院内で感染防止対策を徹底した上で、通常診療をスタートさせていることを強調した。COVID-19の第2波を見据えて「墨東病院は以前に比べて強い病院になった」(上田院長)という言葉を盛り込んだ。ホームページには通常診療を開始する「安全宣言」と併せて、感染防止策を徹底していると記載した。

※墨東病院の取り組みは、「医事業務」(産労総合研究所刊)9月1日発行号の特集「医療への事務的アプローチ」に全文掲載いたします。

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