東京医科大学入試における”男女差別”問題

2019 年 1 月 8 日


友愛記念病院の加藤奨一院長

 東京医科大学の入試で、女子受験生の点数を減点し、女子入学者数を抑えていたことがマスコミ報道されたことを皆さんもご存知だと思います。

 この背景には、「大学入試で”男女差別”はけしからん」という単純な問題ではない、医療界の根深い問題が潜んでいることを皆さんはご存知でしょうか。しかし、この問題を公言する人はあまりいません。どうしても”男女差別”容認論者と受け取られてしまうので、皆、口をつぐんでいます。

 女性医師にも、一生独身を通し男勝りに仕事を続けられる方もいますが、多くは結婚し、その後出産、子育てという大仕事が待っています。卒業後は病院の勤務医となることがほとんどですが、救急医療や入院医療を専門とする「病院」で勤務を続ける場合、産休や当直免除、時短勤務が必要です。常勤勤務医を続けられればまだいいのですが、出産を契機に常勤勤務医を辞める方も多くいます。

 最近の大学医学部入学者の女子比率は3割以上である大学が多く、4割、5割を超えている大学もあります。医学部卒業後2年間は内科、産科、小児科、救急などさまざまな診療科で経験を積む初期臨床研修を受け、卒後3年目から自分が専門としたい診療科の専門医になるための後期研修(専門医研修)を3年ほど受けます。卒後5年くらいで各診療科の専門医となり、その後5年くらい経験を積むと、ある程度”一人前”の医師になります。

 産婦人科や小児科など新人の女性医師比率の高い診療科では7-8割が女性医師のところもあり、卒後5-10年くらいで結婚や出産を契機に病院の常勤勤務を辞め、その後は健診主体のクリニックなどに週2、3日、非常勤勤務をするというケースも多くなります。また、病院常勤医師を続けても当直はできなくなり、病院の医師不足に一役買うことになります。

 こうした問題に特に大学医学部附属病院では頭を悩ませており、医師となる入り口である医学部入学の時点で、女子の入学生比率を制限しようと、受験点数を操作したというのが、今回の東京医科大学の入試における”男女差別”問題だったと思われます。

 東京医科大学がしたことは完全に「×」ですが、医師の女性比率増加のため、医学部定員を増やしてもなかなか病院勤務医不足が解消されないという医療界の問題が根深く横たわっていることを国民の皆さんも知っていただきたいと思い、勇気を持って筆を執りました。
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この記事は、友愛記念病院発行の広報誌「You&I」2018 Autumn Vol.55 「オピニオン」から転載しました。
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