Category

糖尿病

  • お客さんとコミュニケーションしながら、焼きそばを鮮やかに調理する神田さん

    【第1回】30年ぶりのお客様を見送り、涙。支えてくれる全ての人へ「ありがとう」

    神田菊子さん プロフィール 1945年 千葉県出身1965年より浅草寺横でお好み焼き店「つくし」を開業。旦那様を早くになくし、息子さんを3人育て上げ、現在は一人暮らし。14年ほど前に糖尿病との診断を受ける。  「おいしいんだから!待っててね!」鉄板に立ち上る湯気の向こうで、焼きそばを勢いよくさばく神田さんは、創業49年、浅草の老舗お好み焼き店のおかみさん。明るい人柄に惹かれたお客さんで、お店はいつも満員!  元気な神田さんですが、実は慢性の糖尿病を抱えています。 🍀二坪から始めたお店を切り盛り……あるきっかけで暴飲暴食の生活に 「昔はビール4~5本くいくい飲みました……」と菊子さん ――浅草でお店を始めたのはいつですか?  昭和41年の20歳の時、今年で49年目です。当時、会社を興したばかりの主人を経済的に助けようと、自分でできるお好み焼き屋を始めたんです。三人の息子の子育てしながら、商売していました。  少し余裕もでてきた10年目ころ、主人が病気で亡くなりました。そのころから夜飲みに行ったり、外食したりが増えていったんです。仕事があがった夜12時から2~3時まで、スナックで飲んだりゴーゴーを踊りにいったりね。楽しかったです。でも、50歳まで20年もそんな生活を続ければ、具合も悪くなるわよねえ。 🍀だるくて風邪を引きやすい……「えっ!あたし糖尿になるの?」 ――糖尿病に気づいたきっかけは何だったのでしょう?  55歳くらいの頃、なんだかちょっとだるいなとか、疲れがとれず風邪を引きやすい感じがあったんです。それで区の定期健診に行ったら、「糖尿病です」って。「え?あたし糖尿になるの?」ってショックでしたけど、「飲み過ぎ、食べ過ぎですよ」ってお医者さんが言うのに納得してしまいました。  実際には痛くもかゆくもないから、始めは血糖値に気をつけなかったんです。でも、足がだるかったり、頻繁にトイレに行きたくなったりしているうちに、だんだん血糖値が下がらなくなり……ついに慢性で薬が必要と言われ観念しました。 3週間に一度もらう薬は、きちんと管理し欠かさず服用します 🍀「食べたい自分」との葛藤の日々…受け入れられたのは年齢のおかげ  始めは自分だけ美味しいものを食べられないとか、お酒が飲めないとか、空腹を我慢しなければならないことを全然受け入れられなかった。数値は上がるし、もう「食べたい自分」との葛藤! すごく落ち込んで…。 ――どうやって受け入れる事ができたのですか?  年齢のせいもあるかなと思います。体が暴飲暴食を求めなくなってきた感じ。おいしい物をちょっとでいい。70歳の声を聞いて腹五分目が平気になって、やっとこれでいい子になりました(笑) それから一緒に遊んでいたお友達が倒れたり亡くなったりということもあります。長生きしているのはお酒のまない人ばかり。飲む相手がいなければいかないよ。 🍀野菜たっぷり&手作りで、忙しくても毎食定時に食べるコツ ごぼう・レンコンetc…たっぷり温野菜サラダのモーニング 手近な野菜でジュース きな粉がおいしさのポイント ――いま食生活はどんな風になりましたか?  朝7時に喫茶店で、野菜がたっぷり入ったサラダつきモーニングを食べています。昼は1時ころ。  夕飯は7時と決めています。この時間に仕事が忙しく座って食べられない時には、調理場で豆腐などカロリーの低そうなものを少しずつバランスよく選び一口ずつゆっくり噛んで食べて夕食にします。それ以外は間食しません。お菓子をもらっても食事の時までしまっておき、お菓子+ご飯で腹七分目を考えて食べます。  カロリー計算は苦手なので自分の感覚でバランス良く考えて、1食に20品目くらいは採れるようにします。味付けはだしをうまく使って薄味に。砂糖の替わりにみりんやはちみつを使い工夫します。 🍀息子の犬を借りて散歩&フィットネスで、「体を動かす」を毎日の習慣に  朝5時には目がさめて、6時半からは息子の家の犬と40分間散歩です。深呼吸をしたり、足をもちあげたり、股関節をひろげたり。  毎日午後3時になると、近所のフィットネスに行きます。ヨガなどの運動に参加したり、無理ならお風呂だけ行って戻り、昼寝したり家事をしたり。7時までは、二階でくつろいでいます。  夜はお店が忙しそうなら手伝い、暇なら外食に出ます。夜9時には夜の部、2回目の犬の散歩に行きます! 雷門が毎日のコース 犬と一緒に浅草寺界隈を散歩&軽く運動が日課に 🍀自分の体を守っていると、全てのひとに「ありがとう」と言いたくなる 「病気があっても元気。自然とありがとうって優しい気持ちになります」  自分の体のことをちゃんとやっていると、家族やスタッフ、友達、お店のお客様、すべての人に支えられているって感じます。  10年ぶり、30年ぶりに尋ねてきてくれるお客さんもいて、涙が出ちゃいますよ。元気に店を続けていたから会いに来ていただけたのよ。そんな時、外まで見送って「ありがとう」っていいます。  一緒にご飯を食べる、お友達になってもらう、旅行にいってもらう。これもね、相手が嫌だったら行ってくれないです。だからね、自分もみんなが大好き。愛しているから愛されるのね。息子たち、お嫁さん、孫、スタッフ、お客さん、浅草の友人、すべての方にありがとう。そういう気持ちでいると優しくなれるものなんですよね。 管理栄養士のワンポイントアドバイス 神田さんは糖尿病という病気をきちんと受け入れて、自分の体を愛し大切に管理し、とてもよい食生活を送っていますね。実は糖尿病食というのは、一般の方にとっても理想の食生活なのです。神田さんは食事の時間も7時、13時、7時と6時間ずつあけ規則正しくしていますね。多品目の食材を薄味で調理していること、よく噛んで食べている点もいいですね。ただ少し気になるのは、必要なエネルギーがきちんと摂れているかどうかです。機会があれば一度病院の管理栄養士に食事量を確認してもらうとよいでしょう。また、運動は食後が理想です。朝食前の散歩の時には空腹による低血糖状態になってしまうことを避けるために、昼の野菜ジュースを散歩の前に飲んだり、ビスケットや小さなおにぎりなどを少し食べてから散歩に出ることをお勧めします。 【(公社)東京都栄養士会 管理栄養士 長田史恵】

  • お客さんとコミュニケーションしながら、焼きそばを鮮やかに調理する神田さん

    【第1回】30年ぶりのお客様を見送り、涙。支えてくれる全ての人へ「ありがとう」

    神田菊子さん プロフィール 1945年 千葉県出身1965年より浅草寺横でお好み焼き店「つくし」を開業。旦那様を早くになくし、息子さんを3人育て上げ、現在は一人暮らし。14年ほど前に糖尿病との診断を受ける。  「おいしいんだから!待っててね!」鉄板に立ち上る湯気の向こうで、焼きそばを勢いよくさばく神田さんは、創業49年、浅草の老舗お好み焼き店のおかみさん。明るい人柄に惹かれたお客さんで、お店はいつも満員!  元気な神田さんですが、実は慢性の糖尿病を抱えています。 🍀二坪から始めたお店を切り盛り……あるきっかけで暴飲暴食の生活に 「昔はビール4~5本くいくい飲みました……」と菊子さん ――浅草でお店を始めたのはいつですか?  昭和41年の20歳の時、今年で49年目です。当時、会社を興したばかりの主人を経済的に助けようと、自分でできるお好み焼き屋を始めたんです。三人の息子の子育てしながら、商売していました。  少し余裕もでてきた10年目ころ、主人が病気で亡くなりました。そのころから夜飲みに行ったり、外食したりが増えていったんです。仕事があがった夜12時から2~3時まで、スナックで飲んだりゴーゴーを踊りにいったりね。楽しかったです。でも、50歳まで20年もそんな生活を続ければ、具合も悪くなるわよねえ。 🍀だるくて風邪を引きやすい……「えっ!あたし糖尿になるの?」 ――糖尿病に気づいたきっかけは何だったのでしょう?  55歳くらいの頃、なんだかちょっとだるいなとか、疲れがとれず風邪を引きやすい感じがあったんです。それで区の定期健診に行ったら、「糖尿病です」って。「え?あたし糖尿になるの?」ってショックでしたけど、「飲み過ぎ、食べ過ぎですよ」ってお医者さんが言うのに納得してしまいました。  実際には痛くもかゆくもないから、始めは血糖値に気をつけなかったんです。でも、足がだるかったり、頻繁にトイレに行きたくなったりしているうちに、だんだん血糖値が下がらなくなり……ついに慢性で薬が必要と言われ観念しました。 3週間に一度もらう薬は、きちんと管理し欠かさず服用します 🍀「食べたい自分」との葛藤の日々…受け入れられたのは年齢のおかげ  始めは自分だけ美味しいものを食べられないとか、お酒が飲めないとか、空腹を我慢しなければならないことを全然受け入れられなかった。数値は上がるし、もう「食べたい自分」との葛藤! すごく落ち込んで…。 ――どうやって受け入れる事ができたのですか?  年齢のせいもあるかなと思います。体が暴飲暴食を求めなくなってきた感じ。おいしい物をちょっとでいい。70歳の声を聞いて腹五分目が平気になって、やっとこれでいい子になりました(笑) それから一緒に遊んでいたお友達が倒れたり亡くなったりということもあります。長生きしているのはお酒のまない人ばかり。飲む相手がいなければいかないよ。 🍀野菜たっぷり&手作りで、忙しくても毎食定時に食べるコツ ごぼう・レンコンetc…たっぷり温野菜サラダのモーニング 手近な野菜でジュース きな粉がおいしさのポイント ――いま食生活はどんな風になりましたか?  朝7時に喫茶店で、野菜がたっぷり入ったサラダつきモーニングを食べています。昼は1時ころ。  夕飯は7時と決めています。この時間に仕事が忙しく座って食べられない時には、調理場で豆腐などカロリーの低そうなものを少しずつバランスよく選び一口ずつゆっくり噛んで食べて夕食にします。それ以外は間食しません。お菓子をもらっても食事の時までしまっておき、お菓子+ご飯で腹七分目を考えて食べます。  カロリー計算は苦手なので自分の感覚でバランス良く考えて、1食に20品目くらいは採れるようにします。味付けはだしをうまく使って薄味に。砂糖の替わりにみりんやはちみつを使い工夫します。 🍀息子の犬を借りて散歩&フィットネスで、「体を動かす」を毎日の習慣に  朝5時には目がさめて、6時半からは息子の家の犬と40分間散歩です。深呼吸をしたり、足をもちあげたり、股関節をひろげたり。  毎日午後3時になると、近所のフィットネスに行きます。ヨガなどの運動に参加したり、無理ならお風呂だけ行って戻り、昼寝したり家事をしたり。7時までは、二階でくつろいでいます。  夜はお店が忙しそうなら手伝い、暇なら外食に出ます。夜9時には夜の部、2回目の犬の散歩に行きます! 雷門が毎日のコース 犬と一緒に浅草寺界隈を散歩&軽く運動が日課に 🍀自分の体を守っていると、全てのひとに「ありがとう」と言いたくなる 「病気があっても元気。自然とありがとうって優しい気持ちになります」  自分の体のことをちゃんとやっていると、家族やスタッフ、友達、お店のお客様、すべての人に支えられているって感じます。  10年ぶり、30年ぶりに尋ねてきてくれるお客さんもいて、涙が出ちゃいますよ。元気に店を続けていたから会いに来ていただけたのよ。そんな時、外まで見送って「ありがとう」っていいます。  一緒にご飯を食べる、お友達になってもらう、旅行にいってもらう。これもね、相手が嫌だったら行ってくれないです。だからね、自分もみんなが大好き。愛しているから愛されるのね。息子たち、お嫁さん、孫、スタッフ、お客さん、浅草の友人、すべての方にありがとう。そういう気持ちでいると優しくなれるものなんですよね。 管理栄養士のワンポイントアドバイス 神田さんは糖尿病という病気をきちんと受け入れて、自分の体を愛し大切に管理し、とてもよい食生活を送っていますね。実は糖尿病食というのは、一般の方にとっても理想の食生活なのです。神田さんは食事の時間も7時、13時、7時と6時間ずつあけ規則正しくしていますね。多品目の食材を薄味で調理していること、よく噛んで食べている点もいいですね。ただ少し気になるのは、必要なエネルギーがきちんと摂れているかどうかです。機会があれば一度病院の管理栄養士に食事量を確認してもらうとよいでしょう。また、運動は食後が理想です。朝食前の散歩の時には空腹による低血糖状態になってしまうことを避けるために、昼の野菜ジュースを散歩の前に飲んだり、ビスケットや小さなおにぎりなどを少し食べてから散歩に出ることをお勧めします。 【(公社)東京都栄養士会 管理栄養士 長田史恵】