脳卒中は突然やってくる

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脳卒中は突然やってくる

 筆者が診療に携わる中で、最も怖いと感じてきた疾患が脳卒中です。その理由は、脳卒中は非常に急に発症し、突然、人を寝たきりにしてしまう疾患だからです。

 歩いたり、食べたり、話したり、今まで人間として当然のようにできたことが、ある日を境に、できなくなるのが脳卒中です。脳卒中はある日、不意に襲いかかってくる疾患であるため、人は何も準備をすることができず、人生が一変してしまいます。後遺症が残ると、当人だけではなくご家族の生活にも大きな影響を来します。その意味において、筆者は、がんよりも怖い疾患だと感じています。
 
 脳卒中には、いくつか種類がありますが、大きく分けると、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破裂し出血する脳卒中に大別されます。どちらも脳の組織がダメージを受けることで、手足が麻痺して歩行ができなくなったり、ろれつが回らなくなったり、あるいはふらついて歩行ができなくなったり、視野が半分かけたりするなどの症状が出ます。

 脳梗塞には動脈硬化が原因のアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞があります。アテローム血栓性脳梗塞は、比較的大きな脳動脈が閉塞することで起きる脳梗塞で、治療が遅れると日常生活に支障をきたす後遺症を残すことが少なくありません。

 一方、ラクナ梗塞は同じ動脈硬化性の脳梗塞ではありますが、比較的軽症で済む場合もあります。動脈硬化が原因の脳梗塞は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒がリスクとなります。逆に若年時より、これらの危険因子に対処することで、動脈硬化性の脳梗塞に至るリスクを減らせます。動脈硬化は長い年月をかけて進行します。大切なのは健診などで動脈硬化のリスクを指摘されたら、若年時からしっかり対処することです。強くお伝えしたいのは、高齢になって動脈硬化が進んでから対処するのでは遅いということです。

 脳梗塞には、動脈硬化が原因でない脳梗塞もあります。それが心原性脳塞栓症と呼ばれるもので、心臓内にできた血液の塊(血栓)が、脳の血管に流れてしまい、脳の動脈をつまらせてしまうのです。心房細動と呼ばれる不整脈を持つ人や、心臓弁膜症、心臓奇形を持つ人はリスクが高くなります。心房細動は高齢になるほど出現しやすくなり、年を重ねるほど心原性脳塞栓症のリスクは高まります。なお、心房細動が確認された場合、脳梗塞のリスクを点数化し、リスクが高いと判断されれば、心臓内で血栓ができるのを防止できる抗凝固薬を使用し、脳梗塞を予防することができます。

 今回は脳卒中の中でも脳梗塞を中心についてまとめました。脳卒中に少しでも多くの皆様が興味を持ち適切な予防をして、ご自身そしてご家族が、できる限り脳梗塞になることを回避していただければと願います。

医師 加藤 開一郎

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