しつけの理想や期待を押し付けない

contents section

Vol.1 犬の最大のストレス要因は「退屈」

Vol.2 子犬の社会化期は12週齢まで

Vol.3 犬は飼い主に共感できる

ーー保護犬を引き取ることになりました。もう成犬ですが、どのようにしつけをすればいいでしょうか。

 犬の社会化ではVol.2で解説したように、「社会化期」である生後3~12週齢にさまざまな人や犬、場所を経験させて慣らしておくことが大切です。しかしながら、成犬になって問題行動が出てからしつけ教室を利用する方が多くいらっしゃいます。一番お伝えしたいことは、多くの方が「しつけ」に対して極端な考え方を持っているということです。例えば“お座り”、“伏せ”の指示に従うことが「しつけ」だと考える方が多いですが、社会の中で生活をしていく上での適切な振る舞いを身に着ける「社会化」こそが「しつけ」なんです。

 子犬のうちに社会化ができず成犬になった場合、社会化期を過ぎると、新規の刺激に不安や恐怖を持ち始めるようになります。苦手意識を持ったものを克服した上で慣れさせることになるため、社会化の難易度は跳ね上がります。さまざまな経験をさせてあげるべき期間にできなかったという自身の育て方の問題を理解した上で、理想や期待を押し付けないことが大切です。

 また、保護犬を引き取ることになり、しつけに悩む里親さんが多くいらっしゃいます。この場合も、過度な理想や期待を押し付けないことが大切です。保護犬の中でも野犬や野良犬は野生で生活をしていたため、特に人に懐くことにハードルがあります。人間の都合で、譲渡された保護犬が再度手放されるようなケースもあります。どのような背景、特性があるのかを知り、受け入れられるかを判断した上で引き取るべきです。

 人と犬の間に上下関係が必要だと考えられていた頃は、人にとって望ましい行動を無理やりさせたり、望ましくない行動には体罰を与えて止めさせたりといった方法でトレーニングがされていました。しかし最近の研究で、ほめてご褒美を与えるトレーニングの方が効率的であることが分かってきました。してほしくない行動ではなく、何をしてくれたら望ましいかを考え、望ましい行動をとった時にほめてあげましょう。例えばお散歩で犬が引っ張ることを叱るのではなく、飼い主に歩調を合わせてくれた時にほめてあげる、といった具合です。

ポイント💡 ご褒美を与えるトレーニングの方法
→何をしてくれたら望ましいかを考え、望ましい行動をとった時にほめてあげる

 繰り返しになりますが、そもそも日頃から犬の行動欲求を満たしていない状態では、しつけを通した学習をすることはできません。小型犬でもしっかりお散歩をしたり、身を隠せるような寝床を用意したりするなど、犬の特性を理解した上で安心して過ごせる飼育環境を整えるようにしましょう。

カルテコで愛犬のストレスを客観的に評価

わたしと大切な家族の健康管理「カルテコ」7日間無料お試しはこちら

https://karteco.jp/

【App Store】

【Google Play】

 動物の幸せを考える上で、「動物愛護」と「動物福祉」の考え方があります。「動物愛護」の主体は人間で、かわいい、かわいそうなどの感情から来る主観的なものです。「動物福祉」では動物が主体で、幸せな状態を維持するために科学的、客観的に評価することが重要という考え方をします。日本では「動物愛護」の考え方が根付いていますが、「動物福祉」の考え方も取り入れることが世界的に求められています。

 「カルテコ」アプリでは、お腹や肉球などのピンク色の部位の動画を10秒間撮影するだけで、自律神経の状態や脈拍数、呼吸数が計測できます。また、飼い主さんもご自身の顔で同様に計測することができます。愛犬と一緒にストレス度合いを客観的に評価することで、幸せな状態を維持できるようにしましょう。

—————————————-

参考:犬にウケる最新知識 (ワニブックスPLUS新書)(鹿野先生著書)

株式会社Animal Life Solutions 代表取締役社長 鹿野正顕先生

 1977年、千葉県生まれ。麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)で人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングを研究、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。麻布大学卒業後、人と動物の関係に関する専門家やドッグトレーナーの育成を目指し、株式会社Animal Life Solutionsを設立。犬の飼い主教育を目的としたしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」の企画・運営をしながらドッグトレーナーとして指導にも携わっている。2009年には世界的なドッグトレーナーの資格であるCPDT-KAを取得。日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT)理事長。

https://www.study-dog-school.com/member/entry/masaaki-kano-phd

related post

関連記事