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ちゃんと知ろう自分のカラダ
つくばセントラル病院脳神経内科部長 高橋良一先生 「眠ろうとしてもなかなか寝付けない」という不眠の体験のある方がほとんどではないでしょうか。心配事や試験・発表会の前日、熱帯夜など眠れない原因はさまざまですが、通常は長期間、その状態が持続せずに睡眠がとれるようになります。 しかし、不眠が1か月以上にわたって続く場合があります。不眠が続くと、日常生活での不調が出現するようになります。日中のだるさや意欲・集中力低下、抑うつ、めまい、食欲不振などさまざまな症状があり、「長期間不眠が続き、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」とき、不眠症と診断されます。 不眠症は次の4つのタイプがあります。なかなか寝付けない「入眠障害」、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、期待した時間より早く目が覚める「早朝覚醒」、睡眠の満足感が得られない「熟眠障害」です。脳神経内科外来で診療することが多い高齢の方は、とりわけ中途覚醒で悩むケースが多いです。 日本人を対象にした調査で、5人に1人が「何らかの不眠がある」と回答しており、60歳以上の方では約3人に1人で睡眠問題があるといわれています。頻度の高い症状で、診察室で不眠の悩みをお聞きすることは非常に多いです。 「出口の見える不眠治療」が重要視 不眠症については、睡眠時無呼吸症候群や、むずむず脚症候群とも呼ばれる主に下肢に不快な症状を感じるレストレスレッグス症候群、うつ病のような特別な原因がないか考えることからはじめています。 薬物治療に入る前に、「夕方以降カフェインやアルコール摂取を避ける」、「寝室は寝る目的のみに使用する」など生活習慣の見直しも重要です。睡眠について知識を得たいときには、厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」(※)も参考になります。同指針は、「睡眠12箇条」を掲げています。 【健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条】 1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。11.いつもと違う睡眠には、要注意。12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。 不眠症の薬物治療については、「薬を使うとやめられなくなる」「目を覚ましづらくなる」など抵抗を感じる方も多いと思います。新しく開発された薬剤については、依存性や退薬症状(中止するときにおこる副作用)が少ないものがあります。オレキシン受容体拮抗薬は、新しい効き目の睡眠薬で、覚醒に関わるオレキシンの効果を減らすことで自然な睡眠の導入を目指す薬剤です。効果が比較的長時間持続するため、「中途覚醒」への有効性が期待でき、薬剤を中止するときに起こる「反跳性不眠(突然服用を中止すると服用前より強い不眠が現れるようになること)」のリスクも低いといわれています。 こうした新規薬剤の登場により、治療の導入時から、不眠が改善したら薬を減量・中止することを意識した「出口の見える不眠治療」が重要視されています。不眠症について、睡眠薬の長期間の投与や、多剤併用をなるべく避けて治療を目指したいと考えています。 ※厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf 【お知らせ】不眠症治療は脳神経内科では扱っておりませんので、セントラル総合クリニック 一般内科にご相談ください。
つくばセントラル病院脳神経内科部長 高橋良一先生 「眠ろうとしてもなかなか寝付けない」という不眠の体験のある方がほとんどではないでしょうか。心配事や試験・発表会の前日、熱帯夜など眠れない原因はさまざまですが、通常は長期間、その状態が持続せずに睡眠がとれるようになります。 しかし、不眠が1か月以上にわたって続く場合があります。不眠が続くと、日常生活での不調が出現するようになります。日中のだるさや意欲・集中力低下、抑うつ、めまい、食欲不振などさまざまな症状があり、「長期間不眠が続き、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」とき、不眠症と診断されます。 不眠症は次の4つのタイプがあります。なかなか寝付けない「入眠障害」、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、期待した時間より早く目が覚める「早朝覚醒」、睡眠の満足感が得られない「熟眠障害」です。脳神経内科外来で診療することが多い高齢の方は、とりわけ中途覚醒で悩むケースが多いです。 日本人を対象にした調査で、5人に1人が「何らかの不眠がある」と回答しており、60歳以上の方では約3人に1人で睡眠問題があるといわれています。頻度の高い症状で、診察室で不眠の悩みをお聞きすることは非常に多いです。 「出口の見える不眠治療」が重要視 不眠症については、睡眠時無呼吸症候群や、むずむず脚症候群とも呼ばれる主に下肢に不快な症状を感じるレストレスレッグス症候群、うつ病のような特別な原因がないか考えることからはじめています。 薬物治療に入る前に、「夕方以降カフェインやアルコール摂取を避ける」、「寝室は寝る目的のみに使用する」など生活習慣の見直しも重要です。睡眠について知識を得たいときには、厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」(※)も参考になります。同指針は、「睡眠12箇条」を掲げています。 【健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条】 1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。11.いつもと違う睡眠には、要注意。12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。 不眠症の薬物治療については、「薬を使うとやめられなくなる」「目を覚ましづらくなる」など抵抗を感じる方も多いと思います。新しく開発された薬剤については、依存性や退薬症状(中止するときにおこる副作用)が少ないものがあります。オレキシン受容体拮抗薬は、新しい効き目の睡眠薬で、覚醒に関わるオレキシンの効果を減らすことで自然な睡眠の導入を目指す薬剤です。効果が比較的長時間持続するため、「中途覚醒」への有効性が期待でき、薬剤を中止するときに起こる「反跳性不眠(突然服用を中止すると服用前より強い不眠が現れるようになること)」のリスクも低いといわれています。 こうした新規薬剤の登場により、治療の導入時から、不眠が改善したら薬を減量・中止することを意識した「出口の見える不眠治療」が重要視されています。不眠症について、睡眠薬の長期間の投与や、多剤併用をなるべく避けて治療を目指したいと考えています。 ※厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf 【お知らせ】不眠症治療は脳神経内科では扱っておりませんので、セントラル総合クリニック 一般内科にご相談ください。