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  • 「パンデミック」はコロナだけではない! 

    「パンデミック」はコロナだけではない! 

    2040年に向けた診療体制トランスフォーム~大腸内視鏡検査にAI診断を導入する取り組み  新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類相当から5類に変更される見通しとなりました。この3年間において、「パンデミック」という表現も市民権を得るようになりました。そもそもその語源はギリシャ語のpandemos(pan「全て」、demos「人々」、of all the peopleとの意味)。この国は2040年に高齢者人口がピークに達し、それに伴う各種疾患の増加が予想されています。近未来に遭遇する、真の意味でのパンデミックにいかに対峙するか、医療を担う各病院のこの問題への取り組みが注目されています。このコラムではつくばセントラル病院の各疾患のパンデミックへの取り組みを紹介いたします。 社会医療法人若竹会つくばセントラル病院院長 金子剛(消化器内科医)  トップバッターはつくばセントラル病院の消化器内科医・金子剛です。私が担当する消化器領域において、大腸がんは最も大きな問題の一つで、日本におけるがん死の第2位、そのほとんどが老年および生活習慣が原因とされ、今後も増加することが確実な疾患です。当院では2021年8月に大腸内視鏡検査にAI(人工知能)診断を導入、上野卓教消化器内科部長とともに、大腸がんの早期発見および見逃し防止という取り組みをしています。  つくばセントラル病院が採用しているAI診断技術(NEC製wisevision)には、1万2000例の大腸腫瘍の画像がディープラーニングされています。これは20年程度のベテラン医師のキャリアに匹敵します。つまり当院で実施する内視鏡検査においては、生身の医師と機械の医師の2人体制で検査をしていると言えるでしょう。報告によると大腸内視鏡検査での腫瘍性病変の見逃しは20%程度あるとされています。当院ではその確率をAIにより最小化したいと考えています。これはフェイルセーフ(fail safe)の概念の導入で、ヒューマンエラーと呼ぶ人的ミスを、AI技術で未然に防ごうというものです。  具体的には大腸内視鏡検査をする際、AI診断ソフトウエアも同時に起動させます。内視鏡を肛門から直腸内に挿入し、盲腸に達したら空気を入れて腸を膨らませ、内視鏡を引き抜きながら管腔内の粘膜をくまなく観察します。そこでAIのサポートを併用します。AIは病変と疑われる部位を自動検知、場合によっては施術者である内視鏡医より先にポリープなどの病変を「ピッ」という警告音で知らせます。  もちろんAI診断は完ぺきではなく、発展途上の技術です。その一例として過検知といって、病的意義のない所見に対し警告音を発することもあります。一般に検査技術とは「感度」と「特異度」とのバランスです。いくら「感度」が高くて、なんでも病変だと指摘すればいいのではなく、逆に病変ではないと示す「特異度」も併せて高くなくてはいけません。AI診断では「特異度」のさらなる向上が課題です。  このように当院の大腸内視鏡検査では積極的にAI診断を活用していますが、今のところあくまで内視鏡医のサポートとして利用しており、病変の良・悪性の診断には内視鏡医の眼力(診断力)が一番です。ただ、AI診断を導入することで、誰でも等しくベテランの目利きを得られるという、患者さんへの診断技術の「均てん化」が図れると考えています。  大腸がん検診のスクリーニング検査である便潜血検査で要精密検査だったと連絡があると、皆さんは不安になるかもしれません。今や大腸がんの早期発見の第一選択は大腸内視鏡検査です。当院ではその検査において内視鏡医とAI技術がタッグを組んで、病変を早期に発見かつ見落とさないよう心がけていますので、安心して二次検診を受けてください。

  • 「パンデミック」はコロナだけではない! 

    「パンデミック」はコロナだけではない! 

    2040年に向けた診療体制トランスフォーム~大腸内視鏡検査にAI診断を導入する取り組み  新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが2類相当から5類に変更される見通しとなりました。この3年間において、「パンデミック」という表現も市民権を得るようになりました。そもそもその語源はギリシャ語のpandemos(pan「全て」、demos「人々」、of all the peopleとの意味)。この国は2040年に高齢者人口がピークに達し、それに伴う各種疾患の増加が予想されています。近未来に遭遇する、真の意味でのパンデミックにいかに対峙するか、医療を担う各病院のこの問題への取り組みが注目されています。このコラムではつくばセントラル病院の各疾患のパンデミックへの取り組みを紹介いたします。 社会医療法人若竹会つくばセントラル病院院長 金子剛(消化器内科医)  トップバッターはつくばセントラル病院の消化器内科医・金子剛です。私が担当する消化器領域において、大腸がんは最も大きな問題の一つで、日本におけるがん死の第2位、そのほとんどが老年および生活習慣が原因とされ、今後も増加することが確実な疾患です。当院では2021年8月に大腸内視鏡検査にAI(人工知能)診断を導入、上野卓教消化器内科部長とともに、大腸がんの早期発見および見逃し防止という取り組みをしています。  つくばセントラル病院が採用しているAI診断技術(NEC製wisevision)には、1万2000例の大腸腫瘍の画像がディープラーニングされています。これは20年程度のベテラン医師のキャリアに匹敵します。つまり当院で実施する内視鏡検査においては、生身の医師と機械の医師の2人体制で検査をしていると言えるでしょう。報告によると大腸内視鏡検査での腫瘍性病変の見逃しは20%程度あるとされています。当院ではその確率をAIにより最小化したいと考えています。これはフェイルセーフ(fail safe)の概念の導入で、ヒューマンエラーと呼ぶ人的ミスを、AI技術で未然に防ごうというものです。  具体的には大腸内視鏡検査をする際、AI診断ソフトウエアも同時に起動させます。内視鏡を肛門から直腸内に挿入し、盲腸に達したら空気を入れて腸を膨らませ、内視鏡を引き抜きながら管腔内の粘膜をくまなく観察します。そこでAIのサポートを併用します。AIは病変と疑われる部位を自動検知、場合によっては施術者である内視鏡医より先にポリープなどの病変を「ピッ」という警告音で知らせます。  もちろんAI診断は完ぺきではなく、発展途上の技術です。その一例として過検知といって、病的意義のない所見に対し警告音を発することもあります。一般に検査技術とは「感度」と「特異度」とのバランスです。いくら「感度」が高くて、なんでも病変だと指摘すればいいのではなく、逆に病変ではないと示す「特異度」も併せて高くなくてはいけません。AI診断では「特異度」のさらなる向上が課題です。  このように当院の大腸内視鏡検査では積極的にAI診断を活用していますが、今のところあくまで内視鏡医のサポートとして利用しており、病変の良・悪性の診断には内視鏡医の眼力(診断力)が一番です。ただ、AI診断を導入することで、誰でも等しくベテランの目利きを得られるという、患者さんへの診断技術の「均てん化」が図れると考えています。  大腸がん検診のスクリーニング検査である便潜血検査で要精密検査だったと連絡があると、皆さんは不安になるかもしれません。今や大腸がんの早期発見の第一選択は大腸内視鏡検査です。当院ではその検査において内視鏡医とAI技術がタッグを組んで、病変を早期に発見かつ見落とさないよう心がけていますので、安心して二次検診を受けてください。