俗称「脱腸」、病名「鼠径(そけい)ヘルニア」
つくばセントラル病院外科・消化器外科上席部長
岡﨑雅也 医師
つくばセントラル病院では2024年4月にヘルニアを対象とした外来を開設いたしました。 対象とする疾患は鼠径(そけい)ヘルニア、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなど腹部のヘルニアです。
ヘルニアについて特に多いのは、鼠径(ヘルニアです。
鼠径ヘルニアとは、足の付け根(鼠径部)がふくらむ病 気で、腸が出ていることが多いことから、俗に“脱腸”と呼 ばれます。
男女比は約8:1で男性では4人に1人が生涯罹患すると言われている非常に多い疾患です。
鼠径ヘルニアは乳幼児から高齢者まで起こりうる病気です。乳幼児は先天性(うまれつき)がほとんどですが、成人の場合は足の 付け根の組織(筋肉など)が弱くなることが原因です。特に中年以上の男性で、立ち仕事や重いものを持つ機会の多い人に多い と言われています。
当院では、後天的鼠経ヘルニアの患者さんが大多数を占めており、平均年齢が約66歳です。加齢による筋膜の衰えが原因となっているため、どなたでも罹患する可能性がある疾患です。
■唯一治せるのが手術
鼠径ヘルニアは 自然に治ることはなく、手術が唯一“治せる”治療法です。放置すると嵌頓(かんとん:飛び出した部分が元に戻らなくなること)し、腸が壊死してしまうことがあり、その場合は緊急手術が必要になります。
当院では、腹腔鏡手術(TAPP)を第一選択としております。下腹部大手術の既往や全身麻酔が困難な方には鼠径部切開法をします。 安全を十分に考慮し、手術日に入院し、翌日退院の1泊2日で行います。
全身麻酔による手術が基本ですが、全身麻酔のリスクが高いと判断した場合には膨潤局所麻酔という局所麻酔による鼠径部切開法を採用します。この麻酔方法により高齢者や心臓疾患、呼吸器疾患など合併症のある方も安心して手術を受けていただけます。足の付け根(鼠径部)のはれやしこり、違和感などの症状で困っている方は気軽に受診してください。
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