良い睡眠で健康的な生活を送ろう(前編)
社会医療法人慈生会等潤病院 伊藤雅史 理事長・院長
睡眠は体を休めると同時に脳を休めるという大きな役割を果たしています。脳は重さからすると体重の2~2.5%位しかありませんが、エネルギー消費は全体の20%以上になります。大きな働きをする分、休息も必要で、それが睡眠の大きな役割となります。
近年、生活習慣の変化により国民全体の睡眠時間は減っていて、高齢になると早寝早起きで睡眠時間も少なくなる傾向があります。厚生労働省がまとめた2023年の国民・健康栄養調査によると、1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満が最も多く、男性35.2%、女性33.9%でした。また6時間未満の人は男性38.5%、女性43.6%で、性別・年齢階級別にみると男性の30~50歳代、女性の40~60歳代では4割を超えています。
一般的に6.5~7.5時間の睡眠が長生きするという意味では最適で、それより短くても長すぎても死亡リスクが高まると言われています。睡眠は寝付いた最初のころに最も深く眠り、朝に近づくにつれて浅くなります。眠りにはリズムがあり、深い眠りと浅い眠りを約90分のサイクルで繰り返しています。そのサイクルの終わりには、レム睡眠といって高率に夢を見て覚醒時と同じくらい脳が活発に働いています。朝ほどレム睡眠の時間が長くなるため、朝方に夢を見て目覚めることが多いのです。
睡眠のチェックポイントは以下です。
- スムーズな寝付き
- 前半の2時間はぐっすり眠れる
- 途中で目覚めてもすぐに入眠できる
- 後半に夢を見ても気持ちよく爽快に目覚める
- 日中に眠気がない(昼食後を除く)
これら全てに当てはまれば睡眠の質は良いと言えます。
いびきは、飲酒、睡眠薬の服用、疲れ、小さい下あご、太い首周りなどが原因です。いびきは一時的ならば、大きなものでも問題はありません。しかし、毎晩のような大きないびき、急にいびきが止まり呼吸も10秒以上止まって大きな呼吸が再開する、日中の強い眠気などでは睡眠時無呼吸症候群の可能性があり、受診が必要です。