11年連続ワーストの沖縄県
健診結果の有所見率を都道府県別で見ると、2021年は70.4%となった沖縄県が、11年連続でワーストを続けています。全国平均は58.7%でしたが、有所見率の高さは沖縄県だけの問題ではなく、すべての日本国民にとって対岸の火事ではありません。
病気を早期発見、治療するための仕組み
二次世界大戦の影響が残る1940~1960年代、沖縄県民の栄養状態は悪く、70年代から80年代以降になると経済状況が良くなったものの、飲酒量の多さが指摘され、食の欧米化によりカロリーや脂質・糖質を摂りすぎる状態となりました。
また、公共交通機関の発達が十分でないことにより、近くのコンビニエンスストアに行くにも自動車を使うのが当たり前の車社会で、運動不足の原因になっていると考えられます。
2021年の沖縄県の検査項目別の有所見率は、血中脂質が42.6%(全国平均33.0%)、血圧が24.9%(同17.8%)、肝機能が24.1%(同16.6%)で、これらの検査項目が特に高い傾向にありました。業種別では製造業(80.6%)、建設業(75.3%)、運輸交通業(74.7%)が高い業種となっています。
同県は観光や運輸などの第3次産業の人口割合が東京に次いで高いことから(2020年国勢調査)、運輸交通業の割合の高さが県全体の有所見率を引っ張っているという、観光産業の盛んな沖縄ならではの事情とも考えられます。
つくばセントラル病院(茨城県牛久市)健診センター長の神谷英樹医師は、「職場の健診に限れば、有所見者を再検査・治療につなげるためには、事業所やそこの産業医が労働者に受診を促すことが最も効果的と考えている」といいます。
しかしながら、常勤の産業医や保健師が勤務するような大企業を除いては、あまり、積極的に関わっていない印象といいます。
神谷医師はまた、「職場の健診の場合、本人の意思ではなく、職場からの指示で仕方なく受診されている人も見受けられる。このような方の場合は、再検査などの受診につながりにくいため、健診後の受診勧奨といった施策のみではなく、日常の健康教育により健康リテラシーの向上を目指すことも必要であると考えている」と話します。
業務上疾病発生状況等調査:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27177.html