HPVワクチンについて知っておいて欲しいこと

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つくばセントラル病院
産婦人科担当部長
長田佳世医師

 子宮頸がんとは、子宮頸部(膣につながる部分)にできるがんのことです。子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しています。HPVは性交渉で感染することが知られています。多くの場合、感染しても免疫によって排除されます。

 ところが、HPVが排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変や、子宮頸がんが発生すると考えられています。そこで、子宮頸がんの発生と関連が深い一部の型のHPV感染を予防するワクチンが接種可能になっています。

■HPV(ヒトパピローマウイルス) ワクチンとは?

 日本で年間、約1 万人が罹患する子宮頸がんをはじめとするHPV関連疾患の原因となるHPVの感染を予防する目的で開発されたワクチンです。

■HPV ワクチンは、本当に子宮頸がんを予防できるのでしょうか?

「HPVワクチン接種が子宮頸がんを減らした」という報告が海外から相次いでいます。スウェーデンでは、17 歳未満に接種した群で、子宮頸がんになるリスクが88%減少しました。WHO(世界保健機関)はワクチン接種と検診で子宮頸がんは撲滅できると宣言しています。先行して接種が始まったオーストラリアでは2060 年には「子宮頸がんが撲滅」する世界最初の国になると言われています。

■日本ではHPV ワクチン接種が出来るのでしょうか?

 小6から高1相当の女子は定期予防接種のため、無料で接種出来ます。2022年4月から3年間、キャッチアップ接種として(1997年度から2005年度生まれまで)接種費用が助成されます。
2023年4月からはより広い範囲のウイルス型をカバーできる9価ワクチンが定期接種、キャッチアップ接種で使えるようになりました。また、15歳未満(15歳の誕生日の前日)までに1回目の接種をした場合には、2回の接種プログラムとなり、より負担が少なくなります。

 若い時の接種が望まれますが、20 代半ばまでは接種の有効性が高いと言われています。HPV 感染は、子宮頸がんだけではなく、中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなど、男性も罹るがんの原因になります。海外では男女ともに、定期接種になっている国がたくさんあり、日本でも男性の接種は可能です。

■HPV ワクチンは怖いワクチンなので打たない方がよいでしょうか?

 導入された当初、接種後に「歩けない」「けいれんした」などの報道がされました。その後の国内外の調査で、それらの症状がワクチン接種していない方や男性でも起きることがあり、頻度は非常に少ないことがわかりました。

 ただ、少数ですがワクチン接種後に体調不良になられる方はいらっしゃいます。他のワクチンでも起こることがあり、「ワクチン接種後ストレス反応」と呼ばれています。痛みに不安がある場合には、横になって接種をするなどの対策を取ることが勧められます。

 接種後しばらくしてから倦怠感やしびれ・痛みなどの症状が出た場合、別な病気が隠れていないか検査などをします。大多数の方は時間が経つと自然に回復します。軽い運動なども効果的なようです。

■是非、ワクチン接種をご検討ください。

 日本では若い方の子宮頸がんが増えています。命だけではなく、子どもを持つという当たり前の希望を奪うのが子宮頸がんです。ワクチン接種をご検討ください。当院でも接種可能です。中学生までは小児科、高校生以上は産婦人科で対応いたします。

【参考となるサイト】
日本産科婦人科学会 「子宮頸がんとHPV ワクチンに関する正しい理解のために」
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

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