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ちゃんと知ろう自分のカラダ
中島純さん プロフィール 1949年 北海道足寄町生まれ信用金庫勤務の後、映像関係の会社で財務と経理を担当する。2014年7月突然会社で脳梗塞を発症し救急搬送される。半年間の治療とリハビリを経て回復し、会社に復帰。週末には趣味の釣りとゴルフを楽しむ。 🍀夏の暑い日に突然脳梗塞の発作に襲われて 会社で同僚とランチタイム、この日は和食でヘルシーに いくつかの幸運がかさなり早く治療ができました ———中島さんは、お元気そうですね。かなり早くお仕事に復帰することができたということですが、脳梗塞はいつごろどんな状況で起きたのでしょうか? 発症したのは約2年前2014年7月10日です。あの日は会社で昼食から戻り、自分のデスクに座ったのですがその前から少し風邪気味で、デスクでゴホゴホッと咳をしたんです。咳が出たところまでは覚えていますが、そこで意識がなくなりました。僕はいつも職場で冗談を言ったりするほうなので、一瞬会社のみんなは、僕がふざけて倒れたふりをしていると思ったらしいんです。でも何か様子が変だとすぐ気付いたみたいで救急車を呼んでくれたのです。 ———それで救急車はすぐに来たのですね。 はい。ラッキーな事に会社は赤坂にあり、虎ノ門病院のすぐ近くだったので、わずか10分程度で病院に搬送されました。後から聞きましたが、その時救急車に、同僚が同乗してくれました。同時に会社では緊急連絡簿を使って妻に連絡をとってくれていたそうです。 ———社内の連携がよかった感じですね。 はい。10分足らずで入院でき、すぐ医師が脳梗塞と診断したそうです。医師は「脳梗塞の症状の原因となっている血栓を溶かすための薬が有効だが、強い薬なので家族の同意が緊急に必要です」と同僚に話したようです。たまたま、同僚のお母さんが脳梗塞の経験者で治療に関する知識があり「すぐ奥さんが到着しますが、その薬をお願いすることになると思います」と医師にあらかじめ話をしてくれたそうです。ほどなく妻が駆けつけて、妻は気も動転していましたが、すぐ差し出された治療同意書にサインしました。おかげで血栓を溶かすための点滴を早い段階で受けることができました。 ———ところで中島さんはもともと持病などはなかったのでしょうか? 病気になる前はタバコを吸っていましたし、お酒も好きで結構飲んでいました。このため生活習慣病的な要素はなくはなかっ...
筆者が診療に携わる中で、最も怖いと感じてきた疾患が脳卒中です。その理由は、脳卒中は非常に急に発症し、突然、人を寝たきりにしてしまう疾患だからです。 歩いたり、食べたり、話したり、今まで人間として当然のようにできたことが、ある日を境に、できなくなるのが脳卒中です。脳卒中はある日、不意に襲いかかってくる疾患であるため、人は何も準備をすることができず、人生が一変してしまいます。後遺症が残ると、当人だけではなくご家族の生活にも大きな影響を来します。その意味において、筆者は、がんよりも怖い疾患だと感じています。 脳卒中には、いくつか種類がありますが、大きく分けると、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破裂し出血する脳卒中に大別されます。どちらも脳の組織がダメージを受けることで、手足が麻痺して歩行ができなくなったり、ろれつが回らなくなったり、あるいはふらついて歩行ができなくなったり、視野が半分かけたりするなどの症状が出ます。 脳梗塞には動脈硬化が原因のアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞があります。アテローム血栓性脳梗塞は、比較的大きな脳動脈が閉塞することで起きる脳梗塞で、治療が遅れると日常生活に支障をきたす後遺症を残すことが少なくありません。 一方、ラクナ梗塞は同じ動脈硬化性の脳梗塞ではありますが、比較的軽症で済む場合もあります。動脈硬化が原因の脳梗塞は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒がリスクとなります。逆に若年時より、これらの危険因子に対処することで、動脈硬化性の脳梗塞に至るリスクを減らせます。動脈硬化は長い年月をかけて進行します。大切なのは健診などで動脈硬化のリスクを指摘されたら、若年時からしっかり対処することです。強くお伝えしたいのは、高齢になって動脈硬化が進んでから対処するのでは遅いということです。 脳梗塞には、動脈硬化が原因でない脳梗塞もあります。それが心原性脳塞栓症と呼ばれるもので、心臓内にできた血液の塊(血栓)が、脳の血管に流れてしまい、脳の動脈をつまらせてしまうのです。心房細動と呼ばれる不整脈を持つ人や、心臓弁膜症、心臓奇形を持つ人はリスクが高くなります。心房細動は高齢になるほど出現しやすくなり、年を重ねるほど心原性脳塞栓症のリスクは高まります。なお、心房細動が確認された場合、脳梗塞のリスクを点数化し、リスクが高いと判断されれば、心臓内で血栓が...
中島純さん プロフィール 1949年 北海道足寄町生まれ信用金庫勤務の後、映像関係の会社で財務と経理を担当する。2014年7月突然会社で脳梗塞を発症し救急搬送される。半年間の治療とリハビリを経て回復し、会社に復帰。週末には趣味の釣りとゴルフを楽しむ。 🍀夏の暑い日に突然脳梗塞の発作に襲われて 会社で同僚とランチタイム、この日は和食でヘルシーに いくつかの幸運がかさなり早く治療ができました ———中島さんは、お元気そうですね。かなり早くお仕事に復帰することができたということですが、脳梗塞はいつごろどんな状況で起きたのでしょうか? 発症したのは約2年前2014年7月10日です。あの日は会社で昼食から戻り、自分のデスクに座ったのですがその前から少し風邪気味で、デスクでゴホゴホッと咳をしたんです。咳が出たところまでは覚えていますが、そこで意識がなくなりました。僕はいつも職場で冗談を言ったりするほうなので、一瞬会社のみんなは、僕がふざけて倒れたふりをしていると思ったらしいんです。でも何か様子が変だとすぐ気付いたみたいで救急車を呼んでくれたのです。 ———それで救急車はすぐに来たのですね。 はい。ラッキーな事に会社は赤坂にあり、虎ノ門病院のすぐ近くだったので、わずか10分程度で病院に搬送されました。後から聞きましたが、その時救急車に、同僚が同乗してくれました。同時に会社では緊急連絡簿を使って妻に連絡をとってくれていたそうです。 ———社内の連携がよかった感じですね。 はい。10分足らずで入院でき、すぐ医師が脳梗塞と診断したそうです。医師は「脳梗塞の症状の原因となっている血栓を溶かすための薬が有効だが、強い薬なので家族の同意が緊急に必要です」と同僚に話したようです。たまたま、同僚のお母さんが脳梗塞の経験者で治療に関する知識があり「すぐ奥さんが到着しますが、その薬をお願いすることになると思います」と医師にあらかじめ話をしてくれたそうです。ほどなく妻が駆けつけて、妻は気も動転していましたが、すぐ差し出された治療同意書にサインしました。おかげで血栓を溶かすための点滴を早い段階で受けることができました。 ———ところで中島さんはもともと持病などはなかったのでしょうか? 病気になる前はタバコを吸っていましたし、お酒も好きで結構飲んでいました。このため生活習慣病的な要素はなくはなかっ...
筆者が診療に携わる中で、最も怖いと感じてきた疾患が脳卒中です。その理由は、脳卒中は非常に急に発症し、突然、人を寝たきりにしてしまう疾患だからです。 歩いたり、食べたり、話したり、今まで人間として当然のようにできたことが、ある日を境に、できなくなるのが脳卒中です。脳卒中はある日、不意に襲いかかってくる疾患であるため、人は何も準備をすることができず、人生が一変してしまいます。後遺症が残ると、当人だけではなくご家族の生活にも大きな影響を来します。その意味において、筆者は、がんよりも怖い疾患だと感じています。 脳卒中には、いくつか種類がありますが、大きく分けると、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破裂し出血する脳卒中に大別されます。どちらも脳の組織がダメージを受けることで、手足が麻痺して歩行ができなくなったり、ろれつが回らなくなったり、あるいはふらついて歩行ができなくなったり、視野が半分かけたりするなどの症状が出ます。 脳梗塞には動脈硬化が原因のアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞があります。アテローム血栓性脳梗塞は、比較的大きな脳動脈が閉塞することで起きる脳梗塞で、治療が遅れると日常生活に支障をきたす後遺症を残すことが少なくありません。 一方、ラクナ梗塞は同じ動脈硬化性の脳梗塞ではありますが、比較的軽症で済む場合もあります。動脈硬化が原因の脳梗塞は、高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙、大量飲酒がリスクとなります。逆に若年時より、これらの危険因子に対処することで、動脈硬化性の脳梗塞に至るリスクを減らせます。動脈硬化は長い年月をかけて進行します。大切なのは健診などで動脈硬化のリスクを指摘されたら、若年時からしっかり対処することです。強くお伝えしたいのは、高齢になって動脈硬化が進んでから対処するのでは遅いということです。 脳梗塞には、動脈硬化が原因でない脳梗塞もあります。それが心原性脳塞栓症と呼ばれるもので、心臓内にできた血液の塊(血栓)が、脳の血管に流れてしまい、脳の動脈をつまらせてしまうのです。心房細動と呼ばれる不整脈を持つ人や、心臓弁膜症、心臓奇形を持つ人はリスクが高くなります。心房細動は高齢になるほど出現しやすくなり、年を重ねるほど心原性脳塞栓症のリスクは高まります。なお、心房細動が確認された場合、脳梗塞のリスクを点数化し、リスクが高いと判断されれば、心臓内で血栓が...