体がだるい、熱っぽい、出血しやすいが大事なサイン

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年間約1000人が発症、希少疾患の「再生不良性貧血」とは

 血液全体の約45%が血球で、残り約55%程度が血漿成分と言われる。その血球(赤血球、白血球、血小板)が少なくなっていくことで発症する疾患が、希少疾患とされる再生不良性貧血だ。患者は体がだるい、熱っぽい、歯磨きをして出血しやすい、手や足に青あざができるなど、日常生活で珍しくない症状を訴えて病院に来る。

 今年はうるう年。2月29日は4年に一度訪れる希少な日であることから、世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day=RDD)とされている。現在、世界で約7,000種類もあると言われる希少・難治性疾患は、文字通り患者数の少ない疾患で、複雑な疾患のメカニズムなどから治療・創薬研究が進みにくい事情がある。そこで、RDDには希少・難治性疾患に関する啓もう活動が全世界で展開される。うるう年でない年 は、2月の最終日がその日にあたる。

 そもそも希少疾患は患者数が極めて少ない疾患で、米国では患者数20万人未満、欧州では人口1万人当たり患者数5人未満となっている。日本では患者数5万人未満だ。厚生労働省は希少疾病用医薬品に該当する要件を患者数5万人未満としているため、実質的にこれが希少疾患の定義となっている。

 そこで、厚労省の「指定希少疾病用医薬品一覧表(2020年9月現在)」の中の承認済みの疾患とその効能・効果から希少疾患を抽出し、メディカル・データ・ビジョンの診療データベース(440施設)を基に、2022 年1 月から12 月 のそれぞれ疾患の患者数を類推したところ、データ提供施設の中で上位には全身の筋力が低下する「全身型重症筋無力症」や抹消神経の障害で力が入らなくなる「ギラン・バレー症候群」などが並び、その中でも「再生不良性貧血」が7000人超だった。

(=表=)。

 再生不良性貧血の症状や治療法などについて、恵寿総合病院の副院長兼血液内科長の山﨑雅英医師に聞いた。

■再生不良性貧血には年代で二度、山がある

 再生不良性貧血は、年代では10代から20代と50代から60代以上に罹患の山が来る。同疾患は骨髄中の造血幹細胞が何らかの原因で傷害され、働かなくなることで血球(赤血球、白血球、血小板)が減少する病気だ。遺伝はほとんどないと言われる。原因は多くの場合不明だとされ、原因が特定されるケースでは抗がん剤や放射線被ばくなどの影響が指摘される。

 恵寿総合病院は、能登半島の血液疾患の拠点病院としての役割をはたしているが、「能登半島全体で言うと、再生不良性貧血の患者は年間1~2人を確定診断するくらい希少な疾患だ」(山﨑医師)という。

 同病院では10代のケースでは過去、18歳の女性が来院し、再生不良性貧血と診断したことがある。同県内にある金沢大病院で造血幹細胞移植をして、その後、恵寿総合病院で術後のフォローをした。

 再生不良性貧血の確定診断に向け、血液検査をして血球の数を調べ、2種類以上の血球が減少している場合、再生不良性貧血を疑い、骨髄検査やMRI検査をする。

 山﨑医師は、健康診断の血液検査も重要だと話す。

 「健診でも疑い患者が見つかることはある。例えば、白血球が正常値3500~8000/μLくらいのところが、2000/μL台であったり、赤血球(ヘモグロビン濃度)が男性14.0g/dL、女性12.0 g/dLぐらいのところが、それぞれ10や8g/dLに下がっていたり、血小板だと通常15万~30万/μLのところが、5万~10万/μL程度に減少しているだとかになる。患者さんの訴えとしては、体がだるいなどの倦怠感や、白血球が減ってくることで、感染症により発熱を理由に受診してくる方もいる。血小板の場合は出血傾向なので、歯磨きをして血が出る。手や足に青あざが出てくるといったことで来院することもある」

 治療法に関しては、ステージ(病期)ごとに違ってくる。軽症の場合は経過観察になり、それ以降のステージでは、不足した赤血球や血小板を輸血で補充する輸血療法となる。一方、中等症以上の重症になると輸血の頻度も増えてきて重症感染症を引き起こすこともあるので、患者が40歳未満で、HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)と呼ぶ白血球の抗原が一致する人がいる場合には骨髄移植が第一選択になる。骨髄移植をすることで完治を目指す。

 一方、40歳以上の患者、もしくはHLAは主に、兄弟などで一致する人を探すことになるが、該当者がいない患者には、シクロスポリンという免疫抑制剤とATG(抗胸腺細胞グロブリン)と呼ぶ注射剤、TPO(トロンボポエチン)受容体作動薬を併用し造血幹細胞に直接、作用させ造血を促す療法を選択することになる。

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