検診で貧血を指摘されたら

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健診で貧血を指摘されたら

鉄欠乏性貧血編

若年の女性では、月経過多や子宮筋腫などで鉄欠乏性貧血を来すことがあり、鉄欠乏性貧血は珍しい疾患ではありません。しかし、医師の目線では、鉄欠乏性貧血は非常に注意深い診療が必要な疾患です。特に男性や、閉経後の女性に鉄欠乏性貧血がある場合には、その原因に細心の注意を払う必要があります。

 その理由は、鉄欠乏性貧血の原因の1つに「がんからの慢性出血」が潜んでいるからです。がんからの出血を来たしうる具体的な疾患は、消化器管からの出血だと、食道がん、胃がん、小腸がん、大腸がんなどがあります。また、尿路系のがんは腎臓がん、尿管がん、膀胱がんがあり、婦人科系は子宮がんなどが挙げられます。

 がんの組織は、血流が豊富な一方で、正常組織と比較してもろい傾向があります。このため、消化管や尿路のがんは、腫瘍からじわじわとにじみ出るような出血を来すことがあります。このような慢性の消化管出血では、出血により鉄分を喪失し、鉄欠乏性貧血がゆっくり進行します。多くのがんは進行がんになるまで自覚症状がないことが多く、鉄欠乏性貧血は消化管のがんや尿路系のがんの存在を疑う貴重な手がかりの1つです。

 貧血を指摘されたら、放置しないで早めに受診していただくことをお勧めします。とにかく貧血の原因を医師に確認してもらうことが大切です。ご注意いただきたいのは「鉄分不足の貧血があるから、とりあえず鉄剤を服用しよう」とご自身で判断してしまい、受診や精密検査が遅れることです。安易に鉄剤で対症療法することは、貧血の背後に隠れたがんの発見が遅れてしまうことになるかもしれません。

 赤血球に関する検査項目は、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット値などが代表的ですが、直接的な腫瘍マーカーではありません。しかし、これらの検査項目は、がんの存在を疑うきっかけになる大切な指標です。さらに、検診データを見るときにご注意いただきたいのは、検査項目の値が正常範囲内であっても、その数値が年々減少傾向ならば注意が必要です。

 今回は鉄欠乏性貧血を取り上げました。鉄欠乏性貧血に限らず、貧血はその原因の究明が肝心です。繰り返しになりますが、検診などで指摘を受けたら、速やかに受診していただければと思います。

(医師 加藤開一郎)

鉄欠乏性貧血を来しうる疾患例

◆鉄喪失タイプ
▢食道癌
▢逆流性食道炎
▢胃潰瘍
▢胃癌
▢十二指腸潰瘍
▢小腸癌
▢大腸癌
▢大腸憩室
▢痔疾
▢月経過多
▢子宮筋腫
▢子宮内膜症
▢子宮癌
▢卵巣出血
▢腎臓癌
▢尿管癌
▢膀胱癌
▢抗血栓薬使用

◆鉄摂取低下タイプ
▢偏食・ダイエット
▢胃切除後
▢無胃酸症
▢萎縮性胃炎
▢吸収不良症候群

◆鉄需要増大タイプ
▢妊娠
▢授乳
▢成長期(小児・思春期)

※日内会誌99巻6号 P1220-1225.2010より引用改変

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