良質な睡眠は自律神経系の健康を維持する上で必要不可欠です。睡眠中には、自律神経は体内のリズムを整え、心身を回復させるために必要なプロセスを行います。具体的には、副交感神経はエネルギーを温存し、体を回復させる役割があります。副交感神経は、心拍数を減らし、血圧を低下させます。また、消化管を刺激して、食べ物の消化や不要物の排泄を促します。食べ物から吸収されたエネルギーは、組織の修復や形成に利用されます。
睡眠障害は自律神経のバランスを乱す可能性があります。具体的には、睡眠が不足または中断されると、交感神経の活動が過剰になり、ストレス反応を引き起こす可能性があります。交感神経の活動が過剰になると、心拍数が増加し、心臓の収縮力が高まり、呼吸がしやすくなるように気道が広がります。これにより、体内のエネルギーが放出され、筋肉に大きな力が入るようになります。この状態は、体が「闘争・逃走反応」を起こしていると解釈できます。一方、副交感神経の活動が抑制されると、体のリラクゼーションや回復機能が低下します。これらの変化は、長期的には健康問題を引き起こす可能性があります。
41人の大学生を対象に睡眠と自律神経との関係について調べたところ、交感神経と副交感神経の活動量を合わせた自律神経全体の活動量は、客観的な指標を用いて調べた夜間睡眠効率と正の相関が認められ、睡眠効率が低下している学生は自律神経活動が低下していることが分かりました。
質の高い睡眠を確保するためには、良好な睡眠習慣の確立が重要です。一定の就寝時間を設定し、リラクゼーションのテクニックを利用するなどの手段で、自律神経のバランスを整え、深い睡眠を促進することができます。 リラクゼーションのテクニックは睡眠の質を向上させ、自律神経のバランスを保つのに役立ちます。
ヨガ、瞑想、深呼吸などのテクニックは副交感神経を活性化し、リラクゼーションと良質な睡眠を促進します。これらのテクニックは自律神経の調節に有効であり、健康な生活をサポートします。

グラフの上段は一日の活動量と自律神経バランスの関係を示しています。起きている時間帯に交感神経が活性化していることが分かります。一方で、下段は一日の活動量と副交感神経活動量との関係を示しています。赤枠で囲った睡眠中に副交感神経が活性化しています。
副交感神経の活動が活発になっていると、睡眠は良質になります。自律神経を正常に保つためには、良質な睡眠でいかにリラックスができるかが重要となります。寝る前には交感神経を刺激しないように、スマホを使わないようにして、照明を落とす。朝日を浴び、朝食を摂ることで交感神経の活動が活発になり始めます。
自律神経バランスと自律神経活動量は24時間で同じ変動を繰り返しています。心身が健康状態にある人の自律神経バランスをみると、日中は交感神経が活性化し、寝ている間は収まっています。対して、副交感神経は睡眠中に活動が活発になり、リラックスしている状態が続いています。
自律神経と睡眠を最適化するために、定期的な睡眠スケジュールをつくり、リラクゼーション技術を活用することが重要です。これにより、深い睡眠が得られ、生活の質が向上します。
監修 大阪大学大学院医学系研究科 倉恒弘彦 招へい教授