心拡大と病気の関係

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 前回のコラムでは、心臓のサイズが大きくなる「心拡大」と心臓の壁が厚くなる「心肥大」の用語の違いをお話しました。今回は「心拡大」と病気との関わりを深掘りしてお話していきたいと思います。

 健康診断の際の異常所見の1つに心拡大があります。心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があり、いずれかの部屋が大きくなると、胸のレントゲン検査で心臓が大きく映る心拡大が起きてきます。

 心拡大の原因を考えるとき、真っ先に思い浮かべるのは心不全です。その他にも心臓のまわりの膜に液体が溜まる心嚢液貯留という病態や、心臓の筋肉の異常に由来する拡張型心筋症という疾患でも心拡大が見られます。しかし、頻度的には心不全が心拡大の原因の多くを占めます。心不全については、その原因はさまざまですが、いずれも心臓のポンプ機能が低下した状態です。

 心臓は血液を環流させることが役割ですが、心不全となり血液を心臓から血液を動脈にうまく拍出(はくしゅつ)できなくなると、心臓は心拡大を来してきます。もし健診で心拡大を指摘されたら、過度に心配する必要はありませんが、心不全や心嚢液貯留といった重要な病態が示唆されていることもありますので循環器科を受診し、すみやかにその原因を調べていくことが重要です。

 留意していただきたいのは、心不全は初期段階では、無症状が多いことです。しかし、無症状の心不全も、それを放置すれば、心不全は癌のように、やがて進行(悪化)し、自覚症状が出現します。これを症候性心不全と言います。症候性心不全のステージになると、心不全は元に戻らない可能性が出てきます。

 さらに大切なのは心不全を来している原因を突き止め、その原因に応じた対処をすることです。「心不全」という言葉は心臓の状態を表す用語で、その心不全を来たす原因は、さまざまです。下の表は心不全を来す疾患の例ですが、心不全を来す原因は多岐にわたることが分かります。もし、心拡大を指摘されることがありましたら、重要な疾患が潜んでいる場合もありますので、放置せず早期に受診することをお勧めします。

【心不全の原因例】

<心筋の異常による心不全>

□虚血性心疾患

□心筋症:肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症

     拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症、緻密化障害、たこつぼ型心筋症

□心毒性物質:アルコール・重金属

       薬剤(抗がん剤・免疫抑制剤・抗うつ薬・抗不整脈薬

          ・NSAIDS・麻酔薬)

□感染症:ウイルス性心筋炎、細菌性心筋炎、リケッチア感染症、シャーガス病など

□免疫疾患:関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、

      混合性結合組織病

□妊娠:周産期心筋症

□浸潤性疾患:サルコイドーシス、アミロイドーシス、ヘモクロマトーシス、

       悪性腫瘍

□内分泌疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング病、褐色細胞腫、副腎不全、糖尿病

□先天性酵素異常症:ファブリー病、ポンぺ病、ハーラー症候群、ハンター症候群

□筋疾患:筋ジストロフィー、ライノパチー

<血行動態の異常による心不全>

□高血圧

□弁膜症・先天性心疾患

□心膜の異常

□高心拍出性心不全:重症貧血、甲状腺機能亢進症、パジェット病、妊娠、脚気心

□体液増加:腎不全・輸液過多

<不整脈による心不全>

□頻脈性不整脈

□徐脈性不整脈

※引用改変:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

医師 加藤開一郎

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