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ちゃんと知ろう自分のカラダ
医師で、病院経営にも詳しい元厚労省医系技官の石川雅俊先生に、肥満度を表すBMIについて解説していただきました。反響がありましたので、その解説を基にBMIについてさらに詳しく説明していきます。 BMIとは?石川雅俊先生の解説https://portal.medilog.jp/20230208-2/ BMI計算とは BMI(ボディ・マス・インデックス)は、身長と体重を使って自分の体型を知るための指標、目安です。BMIを使えば、自分の体重が健康的な範囲にあるかどうかを簡単にチェックできます。健康管理やダイエットの目安としてとても役立ちますよ。 BMI計算の基本的な方法 BMIの計算はとても簡単です。次の数式で計算します:体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m) = BMI 例えば、体重が60kgで身長が158cmの場合、次のように計算します。 60(体重) ÷ 1.58(身長) ÷ 1.58 = 約24 ※身長はメートルで計算 近くにスマホや計算機があったら、ぜひやってみてください。この数式で算出した数値があなたのBMIです。 計算が面倒な場合は、身長と体重を入力するだけでBMIを計算してくれる「BMIチェックツール」も利用できます。 厚生労働省e-ヘルスネット「BMIチェックツール」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/bmi_check.html 正常範囲と肥満度の判断 身長と体重を使ってBMIを計算したら、その数値を基準と照らし合わせて肥満度を判定します。基準となる数値は国や地域によって異なりますが、ここでは日本の健康診断で使われている日本肥満学会が定めている基準を紹介します。以下の表を参考に、自分のBMIがどの範囲に該当するか確認してみてください。これにより、低体重なのか、標準体重なのか、あるいはどの程度の肥満度なのかが分かります。 自分の体重が健康的な範囲内にあるかどうか確認してみましょう。 BMIの意味とは BMIは身体の身長と体重のバランスを示す数値で、肥満度を評価するのに使われます。ただし、BMIは個々の体型や筋肉量、脂肪の分布を考慮していません。そのため、筋肉量が多い人や骨格が大きい人は、BMIが高くても健康的なことがあります。例えばボディービルダーの方が肥満と分類されること...
医師 加藤 開一郎 残暑が一段落し、寝苦しい夜から解放されつつある今日この頃です。今回は眠りやすさと自律神経の関係について、より良い睡眠を目指すためのアクションの観点からお話ししたいと思います。 自律神経は呼吸、循環、体温、消化、代謝、分泌、生殖など、生体維持のための基本かつ重要な役割を担います。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、自律神経に支配される臓器の活動性は、交感神経と副交感神経の興奮レベルのバランスによって制御されています。覚醒中は活発な精神活動や身体活動を支えるため、交感神経の活動が優位となります。 一方、睡眠中は脳や身体の休息のため、副交感神経の活動が優位になります。特に睡眠脳波で判別するノンレム睡眠(non-REM sleep)※では副交感神経の活動が優位となり、脳を休めるように働きます。 眠りの時間が近づくと、自律神経は睡眠に先行する形で機能が変化することが分かっています。睡眠に問題のない健常成人では、消灯60分前から副交感神経の活動が優位になり、消灯30分前から交感神経の活動が低下することが報告されています。このため、自然の良眠を得るために、私たちは自律神経の機能変化を阻害しないように意識する必要があります。 ところで、睡眠障害は、身体機能、精神機能のほか、行動や認知など多方面にマイナスの影響を及ぼします。特に睡眠障害による精神的影響は重要で、睡眠不足は人の不安感を高め、うつ的な気分を招きかねません。人は不安感が強くなると、心身の緊張状態が高まり、より一層眠れなくなり、より深刻な睡眠障害に陥る危険性があります。このため、日頃から良質な睡眠がとれるように意識していく必要があります。 理想的な睡眠とは、すぐに眠れる、ぐっすり深く眠れる、すっきり目覚められる睡眠と言われます。しかし、筆者は何よりもまずは眠りに入れることが最も重要だと考えています。そのためにも副交感神経が優位に活動するようにすることが、とても重要です。下に睡眠に影響しうる要素を挙げました。 良眠を得るためのアプローチは大きく2つあり、1つは眠る環境である睡眠環境を最適化することです。そして、もう1つは眠りやすい状態に体を整えることです。そして、この2つのアプローチは、たとえ睡眠障害で薬剤を服用していたとしても、その服薬量を減量、中止していくためにも、ぜひ一度チェッ...
社会医療法人社団慈生会等潤病院 伊藤雅史院長・理事長 血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、普通は上腕動脈(わきとひじの間の動脈)の圧力を意味します。血圧は上下2つの数値で示され、上は心臓の収縮により最高に達したときの値で「最高血圧」または「収縮期血圧」、下は心臓の拡張により最低に達したときの値で「最低血圧」または「拡張期血圧」と呼ばれます。 血圧は常に変動しており、通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高く、睡眠中は低くなります。また冬は夏より高くなりますし、緊張しているときや体を動かした直後なども高くなることがあります。そのため、たまたま測った血圧が高いというだけでは「高血圧」とは言い切れず、繰り返し測って血圧が高い場合を言います。 繰り返し測った血圧で、診察室では「最高血圧」が140mmHg 以上、または「最低血圧」が90mmHg以上、家庭ではそれぞれ135mmHg以上、85mmHg以上で高血圧と診断されます。診察室と家庭で基準が異なるのは、診察室ではいつもより血圧が高くなることがあるからです。これは白衣現象・白衣高血圧と呼ばれます。そのため、自宅で測る「家庭血圧」が重要になってきます。 ちなみに厚生労働省の国民健康・栄養調査結果では、「最高血圧」の平均値が男性132.00mmHg 、女性126.0mmHgでした。同調査では、高血圧の改善に向けて「最高血圧」の平均値の目標(「健康日本21・第2次」)を明示して、男性134mmHg、女性129 mmHgとしています。 血圧を測る前には5~10分くらい安静にして、一定の条件で測ることが大切です。座った姿勢と血圧計を腕と同じ高さにして測ります。血圧計にはさまざまな種類があり、上腕で測るものが勧められますが、血圧計を選ぶこと以上に継続して測ること、できれば毎日測定して記録することが重要です。 人によっては左右で差があり、左と右で10mmHg以上違う場合は、高い方で測ります。時間は朝、起床後1時間以内で食事や薬を飲む前に測ることをお勧めします。夜の場合は寝る前に、そのほか体調の悪いときにも測りましょう。参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf2019(令和元)年国民健康・栄養調査結果の概要 22頁参照
医師 加藤 開一郎 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■要旨 スマートフォン、ウェアラブル端末等の汎用小型電子機器による生体情報の活用が近年、注目されています。生体情報の1つに自律神経機能があり、心拍変動分析による自律神経機能評価のほか、端末の光学技術を利用した脈波変動解析による自律神経機能の評価も実用化が進められています。これらの動向は、常時長時間、非侵襲的に実生活におけるストレス状態を可視化し、生活情報が紐付けられれば、ストレス源の特定にもつながります。 神経学や心身医学領域における自律神経不全(自律神経機能不全)、いわゆる自律神経失調症は、診断、治療において患者の自覚症状に大きく依拠しています。小型電子端末の測定機能と自動問診システムを組み合わせると、自律神経機能評価、主観的ストレスの定期評価、自覚された自律神経症状の3つを1つの時間軸で記録・分析することが可能になり、自律神経失調症の診断・治療プロセスに大きな貢献が期待されます。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■はじめに 医療機関を受診する人の中には、自覚する症状が自律神経系の異常に起因することが少なくありません。しかし、現在の多忙な医療現場では、個々の患者さんに自律神経機能評価を実施することは難しく、また医療機関における自律神経機能評価は、短時間の限られたシーンに限られ、患者さんの実生活での自律神経状態を評価することが難しいのが現実です。しかし、スマートフォンやウェアラブル端末等の汎用小型電子端末を利用した自律神経機能の評価が可能になりつつあります。そこで、本文は自律神経系を概説し、自律神経機能に関する測定の臨床的な可能性について概説し、症候学的な見地から考察します。 ■自律神経と疾患の関係性 「自律神経の病気」という言葉を発すると、よくストレスや精神的問題を連想する方が少なくありません。これは私たちが日常的に「自律神経失調」、「自律神経失調症」という言葉や文字を頻繁に見かけることによるかもしれません。しかし、自律神経失調症は、自律神経のバランスに異常を来し自律神経症状がみられる状態を指しますが、学術的には、「自律神経不全」や「自律神経機能不全」と呼ばれ、広義の自律神経の病気ではありますが、「自律神経の病気」...
※2022年は、2022年10月の労働安全衛生規則の改正前後の有所見率を各期間で加重平均した推計値。 (2022年有所見率)=(2022年1~9月の有所見率)×0.75+(2022年10~12月の有所見率)×0.25 年に一度の健康診断を受けた後に手にする健診結果。健診で医師は、「異常なし」「要再検査」「要治療」などと判定します。そのうち「異常なし」以外の人を、有所見者と言います。 健診有所見率の推移 健康診断を受けた人のうち、有所見者の占める割合が有所見率です。この有所見率が今、6割に急接近しています。有所見者が自主的に医療機関に行くのが望ましいのですが、職場などから再検査や治療を受けるよう促されても、働き盛りの世代は忙しいことを理由に健康管理を後回しにするので病気を早期発見できなかったり、治療のタイミングを逃したりしてしまいます。 厚生労働省がまとめた定期健康診断実施結果によると、2022年の有所見率は58.3%となりました。過去からの推移を見ると1997年までは3割台でしたが、2008年に5割を超えました。それ以降、上昇傾向を続けています。 この定期健康診断実施結果は、常に50人以上が働いている事業所が実施する定期健康診断、いわゆる“職場の健診”の有所見率などを集計したもので、労働衛生行政の基礎資料となっています。事業所は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。一方で、労働者は事業所が実施する健診を受けなくてはならないとしています。 有所見率の上昇傾向は労働者の高齢化が影響していると言われています。2022年の検査項目別の有所見率では、血中脂質が31.6%と最も高くなりました。次いで、血圧が18.2%、肝機能検査が15.8%などとなっています。 都道府県別の有所見率 健診結果の有所見率を都道府県別で見ると、2022年は72.1%となった沖縄県が、12年連続でワーストを続けています。全国平均は58.3%でしたが、有所見率の高さは沖縄県だけの問題ではなく、すべての日本国民にとって対岸の火事ではありません。
【プロフィール】 神田生まれの江戸っ子。おせっかいな性格で、人々の健康を願っている。お祭り、お風呂が大好き。 趣味は「健康の知識」を集めること。 8月10日(ハート)生まれ/年齢、性別不明/身長90cm、体重13kg これからどうぞよろしくお願いします。
新・医者にかかる10箇条について認定 NPO 法人ささえあい医療人権センター COML(コムル)理事長の山口育子さんに話していただきました。
つくばセントラル病院脳神経内科部長 高橋良一先生 「眠ろうとしてもなかなか寝付けない」という不眠の体験のある方がほとんどではないでしょうか。心配事や試験・発表会の前日、熱帯夜など眠れない原因はさまざまですが、通常は長期間、その状態が持続せずに睡眠がとれるようになります。 しかし、不眠が1か月以上にわたって続く場合があります。不眠が続くと、日常生活での不調が出現するようになります。日中のだるさや意欲・集中力低下、抑うつ、めまい、食欲不振などさまざまな症状があり、「長期間不眠が続き、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」とき、不眠症と診断されます。 不眠症は次の4つのタイプがあります。なかなか寝付けない「入眠障害」、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、期待した時間より早く目が覚める「早朝覚醒」、睡眠の満足感が得られない「熟眠障害」です。脳神経内科外来で診療することが多い高齢の方は、とりわけ中途覚醒で悩むケースが多いです。 日本人を対象にした調査で、5人に1人が「何らかの不眠がある」と回答しており、60歳以上の方では約3人に1人で睡眠問題があるといわれています。頻度の高い症状で、診察室で不眠の悩みをお聞きすることは非常に多いです。 「出口の見える不眠治療」が重要視 不眠症については、睡眠時無呼吸症候群や、むずむず脚症候群とも呼ばれる主に下肢に不快な症状を感じるレストレスレッグス症候群、うつ病のような特別な原因がないか考えることからはじめています。 薬物治療に入る前に、「夕方以降カフェインやアルコール摂取を避ける」、「寝室は寝る目的のみに使用する」など生活習慣の見直しも重要です。睡眠について知識を得たいときには、厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」(※)も参考になります。同指針は、「睡眠12箇条」を掲げています。 【健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条】 1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。8.勤...
紛らわしい健診所見の用語 今回は心臓の形態に関する健康診断などでの所見についてお話しいたします。 健診や人間ドックの所見で「心拡大」や「心肥大」と書かれたことがある方もいると思います。どちらも心臓の形態を表現する用語ですが、「心拡大」と「心肥大」を混同されている患者さんが少なくありません。しかし、「心拡大」と「心肥大」は、意味するところが全く異なりますし、想定する疾患も大きく異なります。以下の表をご覧ください。 「心拡大」は文字通り心臓全体の大きさが拡大した状態を指します。医師から「心臓が大きくなっています」と言われた場合は、この心拡大を意味します。心拡大の有無を判断する方法は胸部レントゲンです。 しかし、ここで疑問が浮かびます。体が大きい人と小柄な体格の人の心臓のサイズを比べたら、体格が大きい人のほうが心臓の大きさの絶対値が大きいと考えるのが自然です。 この課題に対し、臨床現場では心胸郭比という指標を利用しています。心胸郭比は心臓の横幅を胸の横幅で割った数値です。一般には心胸郭比50%以上を心拡大の有無の目安としています。すなわち胸の横幅の半分以上を心臓の横幅が占めていれば、心拡大の可能性が疑われます。 このように肺の検査だと思われがちな胸部レントゲン検査ですが、実は肺だけをみているのではなく、心臓の形態と心臓とつながる大動脈、肺動脈、肺静脈なども観察しています。言い換えれば、健診で受ける胸部レントゲン検査は、肺疾患だけではなく、循環器領域の疾患の存在を知る上でとても重要な検査ともいえるのです。 次に「心肥大」ですが、心肥大は「心臓肥大」とも言われ、心臓の壁が厚くなった状態を指します。心臓の壁は主に心筋で構成されますので、「心肥大」といえば、一般的には心筋が厚くなった状態を指します。上述の通り、心拡大は胸部レントゲンで確認できますが、心臓の壁の厚みは、レントゲン画像では知ることができません。 心肥大の有無は、心臓超音波検査で心臓に直接、超音波をあてて確認します。少し詳しい話になりますが、心筋の厚みが増すとき、心臓の外側に向かって筋肉が厚くなるのではなく、心臓の内腔に向かって筋肉が厚みを増していくことが多いです。 このため、心臓のサイズは正常なのに、心臓超音波検査で調べたら、心肥大のことがあります。心臓の壁が明らかな厚みを帯びてくると、心電図にも変...
メディカル・データ・ビジョンは、当社が目指す未来の姿を示す動画を制作いたしました。夫のやまとさんが「カルテコ」を使って自身や両親、家族の一員であるペットの健康状態を把握する場面から始まります。妻のさくらさんが体調の異変を感じる場面に転換し、医師・患者の双方が情報を持っている診療の場面を表現しています。動画は未来の世界を描いていますが、技術の進歩は目覚ましく、そう遠くない未来に、真にcするかもしれません。
医師で、病院経営にも詳しい元厚労省医系技官の石川雅俊先生に、肥満度を表すBMIについて解説していただきました。反響がありましたので、その解説を基にBMIについてさらに詳しく説明していきます。 BMIとは?石川雅俊先生の解説https://portal.medilog.jp/20230208-2/ BMI計算とは BMI(ボディ・マス・インデックス)は、身長と体重を使って自分の体型を知るための指標、目安です。BMIを使えば、自分の体重が健康的な範囲にあるかどうかを簡単にチェックできます。健康管理やダイエットの目安としてとても役立ちますよ。 BMI計算の基本的な方法 BMIの計算はとても簡単です。次の数式で計算します:体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m) = BMI 例えば、体重が60kgで身長が158cmの場合、次のように計算します。 60(体重) ÷ 1.58(身長) ÷ 1.58 = 約24 ※身長はメートルで計算 近くにスマホや計算機があったら、ぜひやってみてください。この数式で算出した数値があなたのBMIです。 計算が面倒な場合は、身長と体重を入力するだけでBMIを計算してくれる「BMIチェックツール」も利用できます。 厚生労働省e-ヘルスネット「BMIチェックツール」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/bmi_check.html 正常範囲と肥満度の判断 身長と体重を使ってBMIを計算したら、その数値を基準と照らし合わせて肥満度を判定します。基準となる数値は国や地域によって異なりますが、ここでは日本の健康診断で使われている日本肥満学会が定めている基準を紹介します。以下の表を参考に、自分のBMIがどの範囲に該当するか確認してみてください。これにより、低体重なのか、標準体重なのか、あるいはどの程度の肥満度なのかが分かります。 自分の体重が健康的な範囲内にあるかどうか確認してみましょう。 BMIの意味とは BMIは身体の身長と体重のバランスを示す数値で、肥満度を評価するのに使われます。ただし、BMIは個々の体型や筋肉量、脂肪の分布を考慮していません。そのため、筋肉量が多い人や骨格が大きい人は、BMIが高くても健康的なことがあります。例えばボディービルダーの方が肥満と分類されること...
医師 加藤 開一郎 残暑が一段落し、寝苦しい夜から解放されつつある今日この頃です。今回は眠りやすさと自律神経の関係について、より良い睡眠を目指すためのアクションの観点からお話ししたいと思います。 自律神経は呼吸、循環、体温、消化、代謝、分泌、生殖など、生体維持のための基本かつ重要な役割を担います。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、自律神経に支配される臓器の活動性は、交感神経と副交感神経の興奮レベルのバランスによって制御されています。覚醒中は活発な精神活動や身体活動を支えるため、交感神経の活動が優位となります。 一方、睡眠中は脳や身体の休息のため、副交感神経の活動が優位になります。特に睡眠脳波で判別するノンレム睡眠(non-REM sleep)※では副交感神経の活動が優位となり、脳を休めるように働きます。 眠りの時間が近づくと、自律神経は睡眠に先行する形で機能が変化することが分かっています。睡眠に問題のない健常成人では、消灯60分前から副交感神経の活動が優位になり、消灯30分前から交感神経の活動が低下することが報告されています。このため、自然の良眠を得るために、私たちは自律神経の機能変化を阻害しないように意識する必要があります。 ところで、睡眠障害は、身体機能、精神機能のほか、行動や認知など多方面にマイナスの影響を及ぼします。特に睡眠障害による精神的影響は重要で、睡眠不足は人の不安感を高め、うつ的な気分を招きかねません。人は不安感が強くなると、心身の緊張状態が高まり、より一層眠れなくなり、より深刻な睡眠障害に陥る危険性があります。このため、日頃から良質な睡眠がとれるように意識していく必要があります。 理想的な睡眠とは、すぐに眠れる、ぐっすり深く眠れる、すっきり目覚められる睡眠と言われます。しかし、筆者は何よりもまずは眠りに入れることが最も重要だと考えています。そのためにも副交感神経が優位に活動するようにすることが、とても重要です。下に睡眠に影響しうる要素を挙げました。 良眠を得るためのアプローチは大きく2つあり、1つは眠る環境である睡眠環境を最適化することです。そして、もう1つは眠りやすい状態に体を整えることです。そして、この2つのアプローチは、たとえ睡眠障害で薬剤を服用していたとしても、その服薬量を減量、中止していくためにも、ぜひ一度チェッ...
社会医療法人社団慈生会等潤病院 伊藤雅史院長・理事長 血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことで、普通は上腕動脈(わきとひじの間の動脈)の圧力を意味します。血圧は上下2つの数値で示され、上は心臓の収縮により最高に達したときの値で「最高血圧」または「収縮期血圧」、下は心臓の拡張により最低に達したときの値で「最低血圧」または「拡張期血圧」と呼ばれます。 血圧は常に変動しており、通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高く、睡眠中は低くなります。また冬は夏より高くなりますし、緊張しているときや体を動かした直後なども高くなることがあります。そのため、たまたま測った血圧が高いというだけでは「高血圧」とは言い切れず、繰り返し測って血圧が高い場合を言います。 繰り返し測った血圧で、診察室では「最高血圧」が140mmHg 以上、または「最低血圧」が90mmHg以上、家庭ではそれぞれ135mmHg以上、85mmHg以上で高血圧と診断されます。診察室と家庭で基準が異なるのは、診察室ではいつもより血圧が高くなることがあるからです。これは白衣現象・白衣高血圧と呼ばれます。そのため、自宅で測る「家庭血圧」が重要になってきます。 ちなみに厚生労働省の国民健康・栄養調査結果では、「最高血圧」の平均値が男性132.00mmHg 、女性126.0mmHgでした。同調査では、高血圧の改善に向けて「最高血圧」の平均値の目標(「健康日本21・第2次」)を明示して、男性134mmHg、女性129 mmHgとしています。 血圧を測る前には5~10分くらい安静にして、一定の条件で測ることが大切です。座った姿勢と血圧計を腕と同じ高さにして測ります。血圧計にはさまざまな種類があり、上腕で測るものが勧められますが、血圧計を選ぶこと以上に継続して測ること、できれば毎日測定して記録することが重要です。 人によっては左右で差があり、左と右で10mmHg以上違う場合は、高い方で測ります。時間は朝、起床後1時間以内で食事や薬を飲む前に測ることをお勧めします。夜の場合は寝る前に、そのほか体調の悪いときにも測りましょう。参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf2019(令和元)年国民健康・栄養調査結果の概要 22頁参照
医師 加藤 開一郎 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■要旨 スマートフォン、ウェアラブル端末等の汎用小型電子機器による生体情報の活用が近年、注目されています。生体情報の1つに自律神経機能があり、心拍変動分析による自律神経機能評価のほか、端末の光学技術を利用した脈波変動解析による自律神経機能の評価も実用化が進められています。これらの動向は、常時長時間、非侵襲的に実生活におけるストレス状態を可視化し、生活情報が紐付けられれば、ストレス源の特定にもつながります。 神経学や心身医学領域における自律神経不全(自律神経機能不全)、いわゆる自律神経失調症は、診断、治療において患者の自覚症状に大きく依拠しています。小型電子端末の測定機能と自動問診システムを組み合わせると、自律神経機能評価、主観的ストレスの定期評価、自覚された自律神経症状の3つを1つの時間軸で記録・分析することが可能になり、自律神経失調症の診断・治療プロセスに大きな貢献が期待されます。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■はじめに 医療機関を受診する人の中には、自覚する症状が自律神経系の異常に起因することが少なくありません。しかし、現在の多忙な医療現場では、個々の患者さんに自律神経機能評価を実施することは難しく、また医療機関における自律神経機能評価は、短時間の限られたシーンに限られ、患者さんの実生活での自律神経状態を評価することが難しいのが現実です。しかし、スマートフォンやウェアラブル端末等の汎用小型電子端末を利用した自律神経機能の評価が可能になりつつあります。そこで、本文は自律神経系を概説し、自律神経機能に関する測定の臨床的な可能性について概説し、症候学的な見地から考察します。 ■自律神経と疾患の関係性 「自律神経の病気」という言葉を発すると、よくストレスや精神的問題を連想する方が少なくありません。これは私たちが日常的に「自律神経失調」、「自律神経失調症」という言葉や文字を頻繁に見かけることによるかもしれません。しかし、自律神経失調症は、自律神経のバランスに異常を来し自律神経症状がみられる状態を指しますが、学術的には、「自律神経不全」や「自律神経機能不全」と呼ばれ、広義の自律神経の病気ではありますが、「自律神経の病気」...
※2022年は、2022年10月の労働安全衛生規則の改正前後の有所見率を各期間で加重平均した推計値。 (2022年有所見率)=(2022年1~9月の有所見率)×0.75+(2022年10~12月の有所見率)×0.25 年に一度の健康診断を受けた後に手にする健診結果。健診で医師は、「異常なし」「要再検査」「要治療」などと判定します。そのうち「異常なし」以外の人を、有所見者と言います。 健診有所見率の推移 健康診断を受けた人のうち、有所見者の占める割合が有所見率です。この有所見率が今、6割に急接近しています。有所見者が自主的に医療機関に行くのが望ましいのですが、職場などから再検査や治療を受けるよう促されても、働き盛りの世代は忙しいことを理由に健康管理を後回しにするので病気を早期発見できなかったり、治療のタイミングを逃したりしてしまいます。 厚生労働省がまとめた定期健康診断実施結果によると、2022年の有所見率は58.3%となりました。過去からの推移を見ると1997年までは3割台でしたが、2008年に5割を超えました。それ以降、上昇傾向を続けています。 この定期健康診断実施結果は、常に50人以上が働いている事業所が実施する定期健康診断、いわゆる“職場の健診”の有所見率などを集計したもので、労働衛生行政の基礎資料となっています。事業所は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。一方で、労働者は事業所が実施する健診を受けなくてはならないとしています。 有所見率の上昇傾向は労働者の高齢化が影響していると言われています。2022年の検査項目別の有所見率では、血中脂質が31.6%と最も高くなりました。次いで、血圧が18.2%、肝機能検査が15.8%などとなっています。 都道府県別の有所見率 健診結果の有所見率を都道府県別で見ると、2022年は72.1%となった沖縄県が、12年連続でワーストを続けています。全国平均は58.3%でしたが、有所見率の高さは沖縄県だけの問題ではなく、すべての日本国民にとって対岸の火事ではありません。
【プロフィール】 神田生まれの江戸っ子。おせっかいな性格で、人々の健康を願っている。お祭り、お風呂が大好き。 趣味は「健康の知識」を集めること。 8月10日(ハート)生まれ/年齢、性別不明/身長90cm、体重13kg これからどうぞよろしくお願いします。
新・医者にかかる10箇条について認定 NPO 法人ささえあい医療人権センター COML(コムル)理事長の山口育子さんに話していただきました。
つくばセントラル病院脳神経内科部長 高橋良一先生 「眠ろうとしてもなかなか寝付けない」という不眠の体験のある方がほとんどではないでしょうか。心配事や試験・発表会の前日、熱帯夜など眠れない原因はさまざまですが、通常は長期間、その状態が持続せずに睡眠がとれるようになります。 しかし、不眠が1か月以上にわたって続く場合があります。不眠が続くと、日常生活での不調が出現するようになります。日中のだるさや意欲・集中力低下、抑うつ、めまい、食欲不振などさまざまな症状があり、「長期間不眠が続き、日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」とき、不眠症と診断されます。 不眠症は次の4つのタイプがあります。なかなか寝付けない「入眠障害」、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、期待した時間より早く目が覚める「早朝覚醒」、睡眠の満足感が得られない「熟眠障害」です。脳神経内科外来で診療することが多い高齢の方は、とりわけ中途覚醒で悩むケースが多いです。 日本人を対象にした調査で、5人に1人が「何らかの不眠がある」と回答しており、60歳以上の方では約3人に1人で睡眠問題があるといわれています。頻度の高い症状で、診察室で不眠の悩みをお聞きすることは非常に多いです。 「出口の見える不眠治療」が重要視 不眠症については、睡眠時無呼吸症候群や、むずむず脚症候群とも呼ばれる主に下肢に不快な症状を感じるレストレスレッグス症候群、うつ病のような特別な原因がないか考えることからはじめています。 薬物治療に入る前に、「夕方以降カフェインやアルコール摂取を避ける」、「寝室は寝る目的のみに使用する」など生活習慣の見直しも重要です。睡眠について知識を得たいときには、厚生労働省のホームページの「健康づくりのための睡眠指針2014」(※)も参考になります。同指針は、「睡眠12箇条」を掲げています。 【健康づくりのための睡眠指針2014 睡眠12箇条】 1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。8.勤...
紛らわしい健診所見の用語 今回は心臓の形態に関する健康診断などでの所見についてお話しいたします。 健診や人間ドックの所見で「心拡大」や「心肥大」と書かれたことがある方もいると思います。どちらも心臓の形態を表現する用語ですが、「心拡大」と「心肥大」を混同されている患者さんが少なくありません。しかし、「心拡大」と「心肥大」は、意味するところが全く異なりますし、想定する疾患も大きく異なります。以下の表をご覧ください。 「心拡大」は文字通り心臓全体の大きさが拡大した状態を指します。医師から「心臓が大きくなっています」と言われた場合は、この心拡大を意味します。心拡大の有無を判断する方法は胸部レントゲンです。 しかし、ここで疑問が浮かびます。体が大きい人と小柄な体格の人の心臓のサイズを比べたら、体格が大きい人のほうが心臓の大きさの絶対値が大きいと考えるのが自然です。 この課題に対し、臨床現場では心胸郭比という指標を利用しています。心胸郭比は心臓の横幅を胸の横幅で割った数値です。一般には心胸郭比50%以上を心拡大の有無の目安としています。すなわち胸の横幅の半分以上を心臓の横幅が占めていれば、心拡大の可能性が疑われます。 このように肺の検査だと思われがちな胸部レントゲン検査ですが、実は肺だけをみているのではなく、心臓の形態と心臓とつながる大動脈、肺動脈、肺静脈なども観察しています。言い換えれば、健診で受ける胸部レントゲン検査は、肺疾患だけではなく、循環器領域の疾患の存在を知る上でとても重要な検査ともいえるのです。 次に「心肥大」ですが、心肥大は「心臓肥大」とも言われ、心臓の壁が厚くなった状態を指します。心臓の壁は主に心筋で構成されますので、「心肥大」といえば、一般的には心筋が厚くなった状態を指します。上述の通り、心拡大は胸部レントゲンで確認できますが、心臓の壁の厚みは、レントゲン画像では知ることができません。 心肥大の有無は、心臓超音波検査で心臓に直接、超音波をあてて確認します。少し詳しい話になりますが、心筋の厚みが増すとき、心臓の外側に向かって筋肉が厚くなるのではなく、心臓の内腔に向かって筋肉が厚みを増していくことが多いです。 このため、心臓のサイズは正常なのに、心臓超音波検査で調べたら、心肥大のことがあります。心臓の壁が明らかな厚みを帯びてくると、心電図にも変...
メディカル・データ・ビジョンは、当社が目指す未来の姿を示す動画を制作いたしました。夫のやまとさんが「カルテコ」を使って自身や両親、家族の一員であるペットの健康状態を把握する場面から始まります。妻のさくらさんが体調の異変を感じる場面に転換し、医師・患者の双方が情報を持っている診療の場面を表現しています。動画は未来の世界を描いていますが、技術の進歩は目覚ましく、そう遠くない未来に、真にcするかもしれません。