良い睡眠で健康的な生活を送ろう(後編)
社会医療法人慈生会等潤病院 伊藤雅史 理事長・院長
前回は良い睡眠の重要性やチェック法、そして大きないびきの中に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることを取り上げました。今回は良い睡眠をとるための秘訣をお伝えします。
良い睡眠には単に睡眠時間が長いだけでなく睡眠の質が重要です。睡眠の質を上げることは、疲労回復、ストレス解消、肥満防止、健康維持、美容効果など、様々なメリットがあります。何より、朝スッキリと目覚めて、昨日の疲れもすっかり取れて、日中眠たくなることもなく、一日中元気よく活動できることが一番です。
睡眠休養感という言葉があります。睡眠をとることで休養できた感覚です。2023年の国民・健康栄養調査によると、「ここ1か月間、睡眠で休養が取れている者の割合」は74.9%となり、前年(79.4%)から減少しています。睡眠休養感は2018年(78.3%)以来、8割を割り込んでいます。
睡眠の質を上げるには、生活習慣の改善が非常に重要です。生活習慣の中には、運動や入浴などのように直接的に睡眠の質を高めるものと、一日のリズムを調整する体内時計が正しく働くことで、良い睡眠習慣を獲得し間接的に睡眠の質の向上が得られるものがあります。
入浴は大切で、体を温め疲れを癒しリラックス効果が高まるのに加えて、入浴後に温まった体温が下がるタイミングが、寝つきにとって最良の時間帯となります。赤ちゃんは眠たくなると手足が温まるといわれてます。これは入眠に向けて体熱を発散しているのです。
具体的には、睡眠予定の1.5~2時間前に入浴するのがベストです。寝る前の夜食やカフェイン摂取はよくありませんし、寝酒は一時的に寝付きを促進しますが、その後は眠りが浅くなり、途中で目覚めることもあり、かえって睡眠休眠感が得られなくなってしまいます。
体内時計を整えるには、朝起きてカーテンを開けたり外出して朝の光を浴びたりして、日中は適度な運動を心がけます。夜ふかしや休日の寝坊、昼寝のし過ぎは体内時計のリズムを乱しますのでよくありません。いろいろ努力しても続く頑固な不眠では、隠れた病気が潜んでいることもあり、かかりつけ医によく相談しましょう。睡眠薬服用は安易に考えてはいけません。
厚生労働省は健康づくりのための睡眠ガイドを作成し、高齢者、成人、こどもそれぞれの推奨事項をまとめています。
https://www.mhlw.go.jp/content/001298243.pdf
【参考】 2023年の国民・健康栄養調査